輸出禁止の和牛精液が日本国外へ不正に持ち出されていたことが、農水省への取材で分かった。中国入国時に見つかり中国国内への流出は水際で止められたが、日本の検査はすり抜けており、検査体制の甘さが浮き彫りになった。畜産関係団体は「和牛精液が流出し、他国で生産が広がれば和牛の輸出先を失う。畜産農家は大打撃だ」と危惧する。(金子祥也)
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■ストロー数百本、中国入国時に発覚。 「違法行為、知らなかった」
持ち出したのは、自称大阪府在住の男性。今年、冷凍した和牛精液の入ったストロー数百本を、液体窒素を充填(じゅうてん)した保存容器「ドライシッパー」に入れて国外に運んだ。農水省動物検疫所の聞き取りでは「知人に頼まれた。違法なものとは知らなかった」と話したという。
日本から動物やその一部を他国へ持ち出す場合、家畜伝染病予防法では家畜防疫官の検査を受けるよう定めている。ただ、持ち出す人が申し出なければ、同所は把握できず「今の仕組みだと、悪意があれば容易に持ち出せる」(危機管理課)と実態を明かす。
航空会社の手荷物検査でも発見は難しい。「ドライシッパー」を開けるには知識が必要な上、取り出した内容物は温度が急上昇して劣化することもある。持ち出し禁止でない医療用の試薬などを運ぶことも多いため、国交省航空局も「どの航空会社も、通常は中身まで確認しない」(運行安全課)。X線には通すが、中身は判別できないという。
畜産業界からは心配する声が上がる。法規制の前にオーストラリアに遺伝資源が流出したことにより、オーストラリア産「WAGYU」が日本の和牛と競合し、輸出に影響が出ているためだ。日本畜産物輸出促進協議会は「国も牛肉輸出には力を入れている。遺伝資源の流出は大きな問題だと受け止めてほしい」と訴える。
違反者への対応にも疑問の声が上がる。同法は違反すると、懲役刑が付くこともあるが、罪に問うには動物検疫所の刑事告発が必要。今回、同所は厳重注意だけでこの男性を解放した。同所は「初犯で悪質ではないと判断した」(危機管理課)と説明。手続きに時間がかかるため、刑事告発することは「年に数回もない」という。
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■「氷山の一角」
中国で肥育農家の技術指導を手掛けるなど、現地の事情に詳しい松本大策獣医師は「和牛精液を欲しがる業者はいくらでもいる」と警鐘を鳴らす。既に精液が持ち込まれたとの情報も耳にしたことがあるとし、「今回のケースは氷山の一角ではないか」と指摘する。
日本農業新聞より
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年11月26日月曜日
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