1つは、自動車の販売台数に関する数字だ。中国自動車工業協会によると、10月の全国の自動車販売台数は238万台で、前年同月比で11・7%も減った。今年6月以来、自動車販売台数は5カ月連続の前年同月比減となったが、それは、1992年以来初めての異常事態である。
大型商品である自動車販売台数の激減は当然、中国における消費の萎縮と消費心理の冷え込みを意味する。
人々が以前のように自動車を買わなくなったこと、それこそが消費意欲の低減と、将来の経済状況に対する不安の拡大を確実に表しているのである。
自動車が以前のように売れなくなると、産業全体が受ける悪影響は計りきれない。自動車産業の関連産業の裾野があまりにも広いからである。
さらに、中国の産業全体の萎縮を表す、もう1つの重要数字も出てきた。
中国の中央銀行である人民銀行が今月13日に公表した統計によると、10月中に各金融機関から貸し出された新規融資の総額は、6970億元で、9月の1兆3800億元と比べれば、半分程度に減った。
さらに問題となっているのは、10月の新規融資の内訳である。貸し出された6970億元の新規融資のうち、80%以上は個人向けの融資であって、企業向けの融資は約2割でしかない。
このことが意味するところは実に大きい。要するに中国国内企業の大半は、銀行からお金を借りて生産拡大や設備投資を行おうとは、まったくしていない、ということである。
政府が金融緩和を断行しても、銀行が「お金はいくらでも貸すよ」と言っても、企業は興味を全然示さない。それでは中国の産業が停滞しているというよりも、もはや「半死半生」のような状態となっていることを示している。
産業の停滞と関連して、中国の税収も大幅減となった。中国財務省(財政部)が15日に公表した数字によると、10月の全国一般公共予算収入は前年同月比で3・1%減り、そのうち、一般公共予算収入の大半を占める税収入は前年同月比で5・1%減ったという。
税収の大幅減は中国政府にとっての深刻問題であると同時に、税収源となる企業活動と個人の消費活動の低迷を意味している。
以上のように、今の中国で、個人消費と企業活動の両方が急速に冷え込んでいることは明らかだ。
今後、消費の低迷はより一層の企業活動の萎縮を招き、企業活動の萎縮は失業の拡大や賃下げを生むことによって消費のさらなる低迷を招くという悪循環が生じてくるのであろう。中国経済のますますの沈み込みは、もはや避けられない。
せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。産経ニュースより
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