2017年10月4日水曜日

日銀短観 人手不足が25年半ぶりの水準に

日銀が2日発表した短観=企業短期経済観測調査では、企業の人手不足感がおよそ25年半ぶりの水準まで高まっていることがわかり、多くの企業で働き手の確保が深刻化している実態が浮き彫りになりました。
日銀の短観では、国内のおよそ1万1000社に景気の見方を聞くとともに、従業員の数が「過剰」か「不足」かも尋ねて指数化していて、マイナスが大きくなるほど人手不足だと感じる企業が多いことを示します。

今回の短観では、企業の規模や業種を問わず、軒並みマイナス幅が大きくなり、大企業が前回より2ポイント低下してマイナス18ポイント、中小企業も5ポイント低下してマイナス32ポイントとなりました。

この結果、全体では前回より3ポイント低いマイナス28ポイントとなり、企業の人手不足感が平成4年2月調査のマイナス31ポイント以来、およそ25年半ぶりの水準まで高まっていることがわかりました。

一方、併せて調査した今年度の設備投資額は、昨年度に比べて、製造業は11.7%、非製造業は0.8%、それぞれ増やすとしています。

人手不足が深刻化する中、企業の間では、工場の生産工程や物流拠点での仕分け作業を自動化するといった、いわゆる「省力化」のための投資が増えていて、こうした取り組みが人手不足の緩和や生産性の向上にどこまでつながるのか注目されます。
 
専門家「人手不足クライシスのような状況」
 
大和総研の長内智シニアエコノミストは、深刻化する人手不足について、「一部の業種では“人手不足クライシス”のような状況で、戦略的に進める省力化投資もあるが、人手不足に迫られて省力化投資せざるをえない企業も増えてくると思う」と話しています。

そのうえで、長内氏は「人手不足が進む中、機械やコンピューターに置き換えられる仕事はどんどん変わっていく。ただ、介護や小売りなど、人から機械に置き換えられないような仕事もあるので、省力化投資にも限界がある。今後の政策面では、小売りなどの非製造業、特に地方を中心とする中小企業の人手不足対策が大きな課題になってくる」と話しています。
 
ロボットで省力化
 
人手不足に対応するため外食チェーンでは機械やロボットを導入して作業を省力化する取り組みが進んでいます。

牛丼チェーンの吉野家ホールディングスはどんぶりにご飯を盛りつける機械を全国のすべての店に導入。
牛丼や定食など、メニューごとに決まっているご飯の量を機械が自動で調整します。
従業員の作業時間を少しでも短縮して、スムーズに接客できるようにしようという取り組みです。

ことし1月からは東京・足立区の店舗に、洗い場に、アーム型のロボットを試験的に導入。
吉野家の店では、客が食べ終えたどんぶりなど、食器洗いに1日2時間余りの時間がかかっていました。
従業員が電動ブラシでどんぶりにこびりついた米粒などを洗い落としたうえで食洗機にかけます。
洗い終わった食器はアーム型のロボットがどんぶりの大きさごとに仕分けして重ねていきます。
終わったところでブザーがなって従業員に知らせます。
これによって従業員の食器洗いの時間が20%ほど、短縮できているということです。
会社では、ロボットを改良し、食器洗いの時間を2時間から30分に縮めることを目指しています。

吉野家では、人手不足で働き手の確保が今後、一層難しくなっていくと考え、店で行われている食材の出し入れや掃除などあらゆる作業にロボットなどの技術を取り入れ省力化を進める考えです。
吉野家未来創造研究所の春木茂部長は「店の作業の半分以上を機械化もしくはロボットに将来的には任せることができるのではないかと考えている。従業員の作業を減らし、その分、調理やサービスに集中できる環境をつくりたい」と話しています。
 
センサーで工場を管理
 
人手不足は製造業にも広がっています。

技術を備えた従業員を確保できなければ工場の操業を維持することさえ難しくなります。
そこで従業員の代わりに機械が工場を管理する取り組みも始まっています。

製紙大手、「日本製紙」の北海道白老町にある工場は、昭和35年から操業し、地域経済を支える重要な工場です。
24時間体制で年間38万トンの紙を作っていますが生産設備にトラブルが起きないように点検に当たる技術者不足に悩んでいます。
技術者の人たちは、「聴診棒」と呼ばれる金属の棒を設備に充て、伝わってくる音を、聞きわけ機械に異常が起きていないかを点検し、工場を守っています。
しかし、ベテランの技術者が定年で次々に退職。工場の管理には68人の技術者が必要ですが若い従業員の確保が難しく、今は64人しかいません。

そこで工場が頼ることにしたのが、設備の温度や振動を感知する小さなセンサー。
工場の中に500個余り取り付けて24時間体制でデータを記録し、異常を感知すると直ちに、警告を出します。
技術者が足りない分は機械に管理を任せることにしたのです。

センサーを開発した藤山道博さんは、「人手不足や人材不足があり、メンテナンスを続けるためには何か新しいことを考えなくてはならなかった。この装置は操業の安定に大きな役割を果たせていると思う」と話していました。

会社では、人手不足の中でヒトに代わって機械に作業を任せていかなければ、いずれ工場の操業が維持できなくなっていくとして、数億円かけて、このセンサーを、国内に12か所あるすべての工場に設置することにしています。

同じように人手不足に悩む工場は多いことからセンサーは新たなビジネスになると見て、ほかの企業に販売する事業も始めました。

杉野光広経営企画部長は、「とにかく人に頼らずにオペレーションしていく技術開発が必要になっている。センサーといったものに頼らざるをえない時代が来るんだろうと思っている」と話しています。
 
最新技術で従業員の仕事を管理も
 
工場の生産現場に広がる最新の技術の活用は人手不足への対応にとどまりません。
従業員に指図を出したり仕事ぶりを管理したりするのにもどんどん使われるようになっています。

佐賀県鳥栖市にある大手電機メーカー「パナソニック」の工場は、お店のレジにあるクレジットカード払いの端末や防犯カメラなど特殊な機械をつくっています。
出荷前の製品が正しく作動するかをヒトに代わって自動で検査するロボットなど最新の技術がふんだんに使われています。

半導体の基板をつくるラインでは、メガネ型のウエアラブル端末をつけた従業員が、設備の点検作業に当たります。
メガネに映し出されるのは、設備の点検項目。従業員は、システムの指図に従って点検を進めます。
点検結果はマイクに向かってしゃべるだけ。システムが自動的にデータとして蓄積するのです。

また、工場の天井には移動式のカメラが設置され、画像分析の技術で従業員の作業を見つめます。
作業に遅れがでて、工場の稼働率が落ちているとディスプレーが赤く点灯し、警告を出します。
全部で19台があるカメラが、作業が遅れているラインの従業員の作業の様子を自動的に記録。遅れの原因を分析し、作業の効率化につなげています。

パナソニック佐賀工場の南里太郎工場長は、「人に頼ってばかりでは、いいもの、安定したもの作りはできませんので、設備での判断、こういうものを生かして情報をもの作りに生かしたい。これからこういう技術、または新しい技術、AI、こういうものをつかって日本のもの作りはひろがっていくと思います」と話しています。  NHKニュースより

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