2017年10月9日月曜日

「日本は大げさ」「騒ぎすぎ」と批判したメディアも今や

韓国で中秋節「秋夕(チュソク)」の連休が終わろうとしている。今年は9日までの10連休。北朝鮮情勢が不安視されつつも秋晴れが続き、街頭デモもなく例年同様、終盤まで静かだった。大型連休期間中の韓国からの海外旅行出国者は120万人を超える見通し(韓国紙)だ。ただ、韓国がくつろぐ一方、米国や国連の制裁にもかかわらず、北朝鮮は核・ミサイル開発の手を緩めていないだろう。そう思いつつ、この1年の韓国を振り返ってみた。

昨年10月、この「視線」の欄で朴槿恵(パク・クネ)前大統領が「北の核問題はこのままでは取り返しのつかないことになる」と懸念していたことを書いた。韓国大統領は軍の最高統帥権を持ち、支持率が落ち込もうが、北朝鮮の最もまとまった情報は大統領に上げられる。それを判断した上での国民への忠告であり、日本人記者には説得力があるものだった。

だが、朴氏はその直後、友人の女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑が発覚し、今年3月に大統領を罷免された。収賄罪などで起訴され、今は刑事被告人の身だ。その間、北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を止めた。ところが、大統領罷免を受けた5月の繰り上げ大統領選で文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選し政権を発足させるや、北朝鮮は弾道ミサイル発射を再開。9月には6回目の核実験も強行した。前大統領の心配は当たった。北朝鮮をめぐる状況は1年を経て確実に悪くなっている。

この間、北朝鮮の脅威を前に、時間がないはずの韓国は何をしていたのか。北の弾道ミサイルに対処する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備は遅れ、日韓の安保分野の情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は文在寅氏ら当時の野党勢力の反発で難航した揚げ句、昨年11月末にようやく締結、発効した。野党は当時「どさくさ紛れの締結」だと批判していた。THAADもGSOMIAも、反対の理由は、反米、反日の「国民感情」だった。

1月にトランプ米政権が発足し、春以降、北朝鮮を取り巻く情勢が不穏になる中、4月に日本の外務省は朝鮮半島情勢に関する情報に引き続き注意を促した。また、安倍晋三首相が「朝鮮半島有事」にからむ発言をし、日本メディアも北朝鮮情勢に関する報道を続けた。これら日本の反応に、韓国メディアは一様に「大げさ」「朝鮮半島危機説をあおる」「行き過ぎた危機意識や対応」と批判した。

しかし、文在寅政権も韓国メディアも現実にようやく気付いたようだ。文大統領は6月下旬から7月初旬にかけ米韓首脳会談と、ドイツでの20カ国・地域(G20)首脳会議を終え帰国するや、閣議でこう語った。「痛切に感じなければならないのは、最も切迫している朝鮮半島問題にもかかわらず、われわれには解決する力も合意を導く力もないことだ」

特に6回目の核実験以降、文在寅政権は国民感情を理由に踏み切れなかったTHAADの発射台を急ぎ完全配備した。やろうと思えばできたのだ。文氏は対話に未練を残しつつも北朝鮮への「強い圧力」を強調している。「日本は騒ぎすぎだ。あおっている」と批判していた韓国メディアも、今や「あらゆることに備えよ」(中央日報社説など)といった具合だ。1年前にはTHAADにもGSOMIAにも反対していた文氏は今、大統領としてその必要性を認めている。反対世論も静まりつつある。

北朝鮮は昨年10月に中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイル2発の発射に失敗したが、今年はミサイル発射をほぼ成功させている。北朝鮮をめぐりよくなった点は何もない。1年を経て分かったのは、北朝鮮に対しては結局、誰が大統領でも同じなのだ。ようやく現実に気付き、急いで政策を転換し始めた韓国。北朝鮮に対してはもちろん、こうしたもう一つの隣国の現実を認識しておくべきだろう。  産経ニュースより

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