2017年10月6日金曜日

北朝鮮への武力行使の現実度 米中軸に北の軍事拠点攻撃も

10月10日に衆院選が公示される。選挙戦を前に、北朝鮮をめぐる各国の動向や武力行使の可能性、日本が被害を受けるリスクなど、有権者として把握しておきたい北朝鮮の状況をまとめておこう。

北朝鮮には、米国、中国、ロシアの超大国がメーンとして絡んでいる。日本と韓国も関係国として加わっているが、軍事オプションの主導は超大国しかできない。それが現実だ。

北朝鮮は貿易の大半が対中国であり、軍事同盟も中国と結んでいるので、中国が一番影響力があるとみられている。このため、両国は一枚岩のようだが、内情は違ってきている。実際に両国の関係はかなりギクシャクしてきた。

2012年に習近平氏が中国共産党総書記に就任した際、北朝鮮に特使を派遣したが、金正恩(キム・ジョンウン)氏はそれを追い返した。13年には中国との太いパイプを持っていた張成沢(チャン・ソンテク)氏を中国への事前連絡なしに処刑し、習氏の面子(メンツ)を潰した。

15年に中国で開かれた抗日戦争70周年軍事パレードに正恩氏は出席せず、今年2月には中国の緩い保護下にあったとされる正恩氏の異母兄、正男(ジョンナム)氏が、マレーシアの国際空港で殺害された。

こうした事件はいずれも習氏が正恩氏をコントロールできていないことを示している。なにしろ、祖父の金日成(キム・イルソン)氏や父の金正日(キム・ジョンイル)氏という過去の指導者とは異なり、正恩氏は一回も中国を訪問していない。

父の正日氏は、中国だけには礼を失するなと遺言しなかったのか。北朝鮮と中国は軍事同盟国だが、正恩氏はそれを無視するかのような行動ばかりとってきた。

そうした経緯もあり、今の中国が北朝鮮を抑えることはできないだろう。両国首脳が一回も面会したことがなければ、やりたくてもできない相談だ。

中国は、最後の最後に北朝鮮を見捨てて、中国の国益になる南シナ海問題で、米国とバーター取引する可能性すらある。

ロシアは米中の交渉を見守っている。そしてロシアの存在感を高めるように、北朝鮮と交渉しているのだろう。正恩氏の亡命先をロシアが保証するという噂も出ているほどだ。

米国は国連などでの対話を続けつつ、既にカウントダウンに入っているだろう。これは本コラムでも書いているとおりだ。

以上の状況を総合すると、対話の余地がありうるのは、11月の米中首脳会談までだ。それまでに北朝鮮が折れないと、軍事オプションが浮上する。国連軍または多国籍軍となるが、事実上、米中が中心だろう。
 
軍事オプションは短期間で終わる可能性が高いが、想定外の事態はいつもつきものだ。米軍は北朝鮮の軍事拠点のほとんどを一撃で壊滅できるが、それでも韓国や日本に一定のリスクはある。日本は憲法の制約があるので、軍事では部外者に近い。米国との良い関係から情報が早く入ることだけが救いだ。事実として現状はここまできていることを認識したほうがいい。  夕刊フジより

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