地球温暖化の高精度予測を目指す気候変動観測衛星「しきさい」などを載せたH2Aロケット37号機は23日朝、鹿児島県の種子島宇宙センターで午前10時26分22秒の打ち上げに向け最終点検作業に入った。
H2Aは22日夜、大型ロケット組立棟から発射地点へ移動し、午前1時半ごろに燃料の注入を開始した。打ち上げ時間帯の天気予報は晴れで、発射に問題はなさそうだ。
H2Aは10月の36号機で連続30回の成功となり、成功率は97・2%に達した。信頼性は世界トップクラスだ。ただ8月の35号機では打ち上げの約3時間前に機体に異常が見つかり、1週間延期されるという不測の事態も起きている。打ち上げを行う三菱重工業の担当者は「確実に成功するよう、丁寧に作業を進めている」と語った。
ロケットは宇宙に衛星を運ぶためひたすら上昇していくイメージが強いが、今回は1基の衛星を分離した後、高度を下げてから別の衛星を分離する。こうした飛行は国産ロケットでは初めてだという。1回の打ち上げで異なる軌道に衛星を投入することでコストを抑え、ロケットの運用の幅を広げるのが目的だ。
これを実現するため、今回は2年前に実用化した改良型のH2Aを使う。2段エンジンの着火回数を従来型の2回から3回に増やし、長時間の飛行を可能にした機体だ。2年前は衛星を静止軌道に近い高度約3万4千キロに運んだが、今回はこの能力を複雑な飛行経過に生かす。
計画ではまず、打ち上げの15分4秒後に第2段エンジンの最初の燃焼を停止し、その1分15秒後に高度793キロでしきさいを分離。慣性飛行を約40分続けた後、8秒間だけ2回目の燃焼を行い、機体の向きを反転させて逆噴射する。高度を下げながら約50分にわたり慣性飛行をした後、3回目の燃焼を実施。打ち上げの1時間48分1秒後、超低高度を周回する試験衛星「つばめ」を高度482キロで分離する。
H2Aがこの新たな飛行技術を獲得できるか注目される。午後1時45分ごろには関係者が宇宙センターで会見し、打ち上げの結果を説明する予定だ。
しきさいは日射を遮る大気中のちりや雲、温暖化をもたらす二酸化炭素を吸収する植物の分布などを観測。これらが温暖化に及ぼす影響を解明し、将来予測の精度向上につなげる。
つばめは高度200~300キロの超低高度の飛行を目指す試験衛星だ。地球観測衛星の多くは高度600~800キロを飛ぶ。超低高度では大気の抵抗があり一般に衛星の飛行には不向きだが、つばめはイオンエンジンを噴射して軌道を保つ。実用化すれば、低コストで高解像度の地球観測を実施できると期待される。
打ち上げの様子は動画サイト「ユーチューブ」の宇宙航空研究開発機構(JAXA)のチャンネルなどで午前10時10分から午後12時20分まで生中継される。筑波宇宙センター(茨城)、伊丹市立こども文化科学館(兵庫)など全国30カ所以上で中継画像を見るイベントも行われる予定で、土曜日とあって人出が見込まれる。産経ニュースより
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2017年12月23日土曜日
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