2017年12月2日土曜日

データ不正は製造業の危機か 企業体力低下で失われた余裕

日産自動車や神戸製鋼所、東レなどでデータ不正問題が次々に発覚している。日本の製造業に対する信頼が失われるとの指摘もあるが、どのような背景があるのだろうか。
 
各社それぞれの不正が行われていた時期はどうか。日産は検査表に不正押印した件で2014年1月から17年9月に製造された38車種がリコールの対象となった。神戸製鋼は10年ほど前から製品の強度やサイズなどのデータを改竄(かいざん)し納入、東レは08年4月から16年7月まで品質データ数値の不正な書き換えをしていたと報じられている。一部では、かなり以前からデータ不正が行われていたという。

共通しているのは、納入先と契約した数値を外れたため数値を改竄したものの、安全性確保のために必要な数値はクリアしており、製品としては問題ないとされることだ。

実際には余裕を持って安全性をクリアするため、契約基準と安全基準には、当然のことながら差がある。契約基準の数値を満たしていなくても、安全性に問題のない場合、納入先の了解を得て納入する「特別採用(トクサイ)」は製造業ではよくある話だ。もっとも、神戸製鋼や東レは納入先の了承を得ていない、いわば「トクサイの悪用」であった。

日産の場合、無資格検査が問題であったが、国土交通省の定める資格基準の中では、長期間の研修などがあまりに実態と乖離(かいり)しており、これが企業には無駄に思えたという意見もある。このため、安全上支障の出ない範囲で役所基準を無視していたのが実情だ。

一連の不正データ問題が、報道通りだとすれば、リーマン・ショック以降、企業体力が弱まる中、余裕をもって安全性をクリアすることもままならなくなり、実態としては理不尽ともいえる役所の資格基準を順守する余裕もなかったのかもしれない。

これらの不祥事は企業間取引であり、一般消費者の目には触れない。プロ同士の取引であり、「トクサイ」もあった。しかし、リーマン・ショック以降の度重なるコスト・カットの中で、企業側に甘えもあり、「トクサイの悪用」や役所基準の無視があったのではないだろうか。

ただし、報道に問題もある。「不正問題」というが、契約基準と安全基準が混同されたものも多い。築地市場の豊洲市場への移転問題で、環境基準と安全基準が混同され、安全である豊洲が「危ない」とマスコミに報じられたことを思い起こさせる。豊洲問題の延長線上で、今回のデータ不正も報じられているフシがある。

いずれにしても、安全基準をクリアしているかどうかが最終ラインであるので、そのチェックには万全を尽くすべきだ。

問題発覚から公表までの期間が長いので、企業イメージを損なってしまうし、問題発覚後も取引していたことになり、企業のコンプライアンス(法令順守)の点でも問題だ。

安全基準がクリアされていればいいが、もしそうでないなら、そこで本当に日本の製造業の信頼が失われるだろう。夕刊フジより

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