終戦直前の1945年、政府債務はGDPの約2倍にまで急増し、終戦直後の混乱の中で縮小したが、いま政府債務は終戦直前の水準を上回っている。このような状況の中で先般、ロイターが以下の報道をした。
「財務省は30日、1980年代後半のバブル期の財政運営を検証し、『経済状況が良好なときこそ歳出を抑制し、財政健全化を着実に進める必要がある』との考えを示した。プラザ合意後の円高不況対策や対外不均衡問題など、財政出動を求める時代の要請はあったものの、当時の「拡張的な財政スタンス」に警鐘を鳴らした。来年度予算編成に向けた議論のたたき台として、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)財政制度分科会に提出した。戦後70年の節目の年にあたり、戦前・戦後の財政運営からの教訓を導き出した。(略)
バブル経済崩壊後は特例公債発行が『常態化』する現状を展望し、財務省は『経常歳出は経常歳入でまかなう』原則の堅持を強調。好況時こそ財政健全化を着実に進めることが『経済ショックが生じた際の対応余力を将来にわたって確保することにつながる』として、諸制度の抜本的な見直しが必要とした。(略)
終戦直後の混乱期の財政政策では、ハイパーインフレーションによって、終戦直前に200%程度あった国債残高の対名目GDP比は、1950年度には15%弱まで急速に低下したが、同時に悪性インフレ阻止のために実施された『預金封鎖』や『新円切り替え』の金融危機対策、財産税といった特別課税などが、国民にとって絶大な痛みを伴うものだったことを浮き彫りにした」(9月30日付ロイター記事『バブル期の財政運営に警鐘、好況時こそ財政健全化着実に=財務省』より)
この記事は、財務省が財政制度等審議会(財務相の諮問機関)財政制度分科会に提出した資料に基づいている。
冒頭に記載されているように、80年代後半のバブル期の財政運営を検証し、拡張的な財政スタンスに警鐘を鳴らしていることは確かであるが、記事の最後の部分にあるように、それだけではない。財務省の資料全文を読めばわかるとおり、終戦直後の「預金封鎖」「新円切替」を柱とする金融危機対策や、「財産税」「戦時補償特別税」等を柱とする当時の財政再建計画にも触れ、以下の図表のように、対GDPで2倍にも達した政府債務の要因を分析している点が重要だ。
終戦直前の44年度(昭和19年度)、204%にも達した政府債務(対GDP)は、終戦直後の48年度(昭和23年度)には20%にまで縮小した。また、終戦直後の46年度、47年度、48年度の卸売物価は、432.9%、195.9%、165.6%という高インフレとなった。このような状況の中で、政府債務縮減の要因は、「財産税」「戦時補償特別税」よりも、高インフレに伴う債務縮減のほうが大きかったというものである。
これはよく知られた事実だが、戦後直前と同様、拡張的な財政・金融政策の下で政府債務が急増する今、戦前・戦後の財政運営からの教訓を持ち出すことで、高インフレによる債務縮減を警戒し始めている証しということはできないだろうか。Business Journalより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2015年10月21日水曜日
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