2015年10月25日日曜日

韓国、貿易立国の危機

環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受け、参加を見送ってきた韓国が今後の成り行きを不安げに見守っている。

韓国は2004年に初めてチリとの自由貿易協定(FTA)を発効させて以来、これまでASEAN(東南アジア諸国連合)、EU(欧州連合)など、貿易でつながりの深い国や地域と相次いでFTAを結んできた。

時代遅れのFTA政策

中でも2012年に米国との間で発効したFTAは、2代前の盧武鉉(ノムヒョン)政権時代の2007年に締結。農業や医療保健、知的財産といった分野で、韓国内からの強い反発をはねのけ、強力に推進した実績を持つ。


さらに今年は中国との間でも、FTA交渉が妥結。これで韓国の貿易額の8割を超える部分が自由貿易となった。そのため「FTA強国」と自称して、TPP交渉を冷ややかに見ていた。

ところが、TPP妥結が視野に入った9月上旬ごろから、「TPPに参加すべき」との声が政府内からも出始めた。FTA政策に詳しい亜細亜大学の奥田聡教授は韓国の変節について「新たに生まれる貿易ルールから外されてしまったことがようやくわかったのだろう」と指摘する。

「親中路線のツケ」。TPP妥結直後に韓国紙に躍った見出しだ。TPPの主役は日本と米国。韓国にとって共に主要貿易国ながら、「日米と米韓、それぞれの間の親密度に差を感じたのではないか」と奥田教授は言う。

現在の朴槿恵(パククネ)政権は、2013年の発足以降、外交で点数を稼ごうとしてきた。他国で日本の悪口を言いふらし、“告げ口外交”と称された意固地なまでの反日政策もその一つだ。

今や貿易額で3割近い比重を占めるようになった、中国への傾倒ぶりも目立っていた。また、中国の習近平主席と朴大統領の個人的な親密さも話題になるほど、中韓関係は緊密になった。

「通商問題、北朝鮮との南北問題を考えると、中国との一定の親密さは必要」(韓国・外交省関係者)という指摘は依然として根強い。だが、先の韓国紙のような反応が出るほど、「中国への傾斜が行き過ぎとの声も高まり、日本が参加しているTPPに加わるべきという声が上がっている」(韓国・全国経済人連合会関係者)。

中国傾斜がTPP参加の障害に

世界の貿易政策の流れも、韓国がFTA政策を強力に推し進めた2000年代後半から、大きく変化している。たとえば、メーカーのサプライチェーンは多くの国にまたがるようになった。こうなると、韓国が個別に締結してきたFTAの域内を超えて、輸出入が行われるケースが増えてくる。関税優遇のため、一定の割合で製品を現地で生産する規則を定めたとしても、その効果は限定的となる。

各国、各地域と個別に手を結んできた韓国政府のやり方は、すでに時代遅れだ。環太平洋地域のさまざまな国を含むTPPのような、「メガFTA」に参加するうえで、むしろ障害になっている。
朴大統領は訪米して10月16日にオバマ大統領と首脳会談を実施した。しかし、これまでの露骨な中国傾斜を含め、米国政府内では韓国への不信感が漂う。貿易立国は瀬戸際に立たされている。

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