「米中百年戦争」が始まっている。
根底に流れるのは世界的ヘゲモニー(=覇権)を持つ国は、新興国の台頭を許さない-という古今東西の歴史的原則である。
古代ギリシャの二大都市、アテネとスパルタの「ペロポネソス戦争」は2次にわたった。
第1次(紀元前460~同445年)は混戦、第2次(同431~404年)はスパルタの勝利に終わり、ペルシアを巻き込んで、結局はマケドニアの台頭を促した。
「西洋文明発祥の地」といわれたギリシャの国力は弱まり、やがて衰退に向かった。ペロポネソス戦争は54年も続いた。
ローマがカルタゴを滅ぼした「ポエニ戦争」は3次にわたった。第1次(同264~241年)はシチリアをめぐり、第2次(同219~201年)では、カルタゴの猛将ハンニバルがローマに迫った。ローマは敗戦直前に追い込まれた。
第3次(同149~146年)で、カルタゴは今日の日本のように無防備で戦って滅ぼされた。実に、ポエニ戦争は118年続いた。
「米中百年戦争」を、何をもって始まりとするかは、後世の歴史家が算定するだろう。シナ事変から中華民国支援を開始し、第2次世界大戦以後、特に朝鮮戦争以後、敵対関係となった米中関係を「第1次米中戦争」と見るならば、現在は貿易をめぐっての「第2次米中戦争」である。
ローマと戦ったハンニバルの猛追ぶりは、米国の心胆を寒からしめた、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」と、「中国製造2025(MADE IN CHINA 2025)」計画(=世界の製造強国を目指す計画。軍事力強化に直結する)につながる。おそらく、中国の負けとなるだろう。
狼狽(ろうばい)した中国は「中国製造2015」の宣伝を中断した。
しかし、中国がその後も膂力(りょりょく=腕力)を失わず、臥薪嘗胆を果たそうとするなら、米国の衰弱もまた自明の理である。EU(欧州連合)は末期的、日本は退嬰的(たいえいてき=進んで新しいことに取り組もうとしないさま)、インドは興隆の途上。
であるとすれば、半世紀後、米中戦争はどちらに軍配が上がるか?
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『アメリカの「反中」は本気だ!』(ビジネス社)、『習近平の死角』(扶桑社)など多数。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年8月1日水曜日
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