法務省入国管理局が今年二月、入管難民法に違反する非正規滞在のベトナム人四十七人をチャーター機で集団強制送還した際、妻や夫、子どもを日本に残し、十二家族が離れ離れになったことが法務省の資料や共同通信の取材で二十五日判明した。日本に残された家族が難民で、祖国では迫害を受ける恐れがあったり、子どもが日本語しか話せなかったりすると帰国して家族が一緒に暮らすのは困難だ。
米トランプ政権は不法移民の強制送還や移民親子の別施設収容で多数の家族を分断、米内外で批判が高まるが、日本でも結果として同様の家族分断が生じている形だ。強制送還による家族分断はこれまでにもあったが、実態はあまり明らかになっていなかった。外国人支援団体は「人道的配慮に欠ける。特別に在留を許可すべきだ」と批判している。
法務省によると、ベトナム人の集団送還は二月八日で、四十七人の年齢は八~四十九歳。滞在期間は最長二十一年五カ月で、十五年以上日本で暮らしてきた人が四人いた。
非正規滞在者は一九八〇年代以後、工場や建設現場の仕事を担う形で増え、家族をもうけ日本社会に定着した人も多い。現在も人手不足の産業を支えている。
二月に分断された十二家族の一人で、二〇〇七年に妹のパスポートで来日し夫や五歳の長男と群馬県伊勢崎市で暮らしていたグエン・ティ・ロアン・プオンさん(46)は電話取材に「(送還直前に)目の前で引き離された息子の泣き声が忘れられない」と話した。
プオンさんの夫で難民認定されているホアン・バン・ヒエップさん(52)は「専業主婦の妻がいなくなり生活が一変。息子は『ママに会いたい』と泣く」と話した。長男は日本語しか分からず、ヒエップさんは難民のためベトナムへの帰国は不可能という。
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(東京)の山岸素子事務局長は「日本で長期間、家族と共に地域に根ざして暮らす非正規滞在者らには人道的に在留特別許可を出すべきだ」と指摘している。東京新聞より
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