日本が完全なる島嶼(とうしょ)防衛体制を構築するために、なくてはならない部隊が第5地対艦ミサイル連隊だ。
東西冷戦当時、日本領海へと進出してくるソ連海軍は脅威だった。水上戦闘艦艇だけでなく、揚陸艦艇も多数保有しており、北海道への陸上部隊の着上陸は何としても阻止しなくてはならなかった。
そこで、海上自衛隊の護衛艦をサポートするため、陸上から洋上の敵艦艇を攻撃する装備を開発した。それが1988年から配備が開始された「88式地対艦誘導弾」だ。誘導弾とはミサイルのことを指す。
この新しい装備を運用するため、6個の地対艦ミサイル連隊が新編された。北海道(北千歳・美唄・上富良野)に3個連隊、東北(八戸)、関東(現在は廃止)、九州(健軍)に1個連隊ずつという陣容だ。この配置からも北海道を何としても守ろうという戦術が見える。
九州・沖縄地域を防衛警備する西部方面隊に所属しているのが第5地対艦ミサイル連隊だ。先述のように、東西冷戦当時、日本は北方防衛重視であった。だが、中国の台頭により、今は日本南西島嶼部をいかにして守るかが重要となってきた。
これまで沖縄本島以南には、陸自は戦闘部隊を配置してこなかった。有事の際は、九州から部隊を展開させて対応する戦術だった。第5地対艦ミサイル連隊も同様で、民間のフェリーなどで、沖縄等へと展開する訓練を何度も行ってきた。
だが、中国海軍の脅威は増大している。そこで2016年3月28日に与那国島に駐屯地を開庁し、沿岸監視隊を置いた。中国はそれをあざ笑うかのように、16年12月には、空母「遼寧」を含む艦隊を率いて、宮古島の北東110kmの海峡を通過し、太平洋側へと進出した。
防衛省はただ指をくわえて見ていることはせず、19年2月の完成を目指し、宮古島に駐屯地を新設する。ここに第5地対艦ミサイル連隊の一部を配置する計画だ。
このように最前線部隊となったこともあり、最新式の「12式地対艦誘導弾」が配備された。中国の技術は進歩しており、もはや先代の「88式地対艦誘導弾」では太刀打ちできない可能性があるからだ。
そして、7月12日、ハワイ・カウアイ島で行われた環太平洋合同演習「リムパック2018」の一環として、「12式地対艦誘導弾」の実弾射撃を行った。退役した米戦車揚陸艦を目標に、2基の発射機から計4発を発射し、見事全弾命中させた。
尖閣諸島周辺では連日のように中国公船が周回し、宮古島や与那国島近海を中国海軍はわが物顔で航行する。それら海域を狙える、同部隊が宮古島へと配置されれば、抑止力は高まり、今のような状況を打開できると期待されている。
■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『自衛隊の戦力-各国との比較』(メディアックス)、『陸自男子-リクメン』(コスミック出版)など。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年8月24日金曜日
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