2018年8月25日土曜日

日米豪、中国切り捨て…「親中」豪政府も米国に歩調を合わせ封じ込め

米国との貿易戦争で中国が一段と窮地に追い込まれている。制裁関税第2弾を発動したトランプ政権だが、9月には22兆円分を対象にした巨額な第3弾が控え、さらには全中国製品への制裁も示唆するなど一歩も引かない構えだ。安全保障上の懸念を制裁理由にする米国に歩調を合わせ、オーストラリア政府が中国大手通信メーカーを排除するなど包囲網も狭まる。日本でも大手自動車メーカーが中国市場に見切りを付ける動きが出ている。
 
米ホワイトハウスは23日、米国で22日から行っていた事務レベルの米中貿易協議が終了したと明らかにした。

米側は2日間の協議で「公正で均衡が取れた互恵的な経済関係の実現方法について意見を交換した」と説明した。中国による米先端企業の技術移転強要といった「構造的な問題」も含まれたといい、米中間の隔たりは依然大きい。

米国による制裁関税の対象額は第2弾発動で計500億ドル(約5兆5000億円)となり、第3弾も合わせれば中国からのモノの輸入額のほぼ半分となる2500億ドル(約27兆5000億円)となる。

米国が第3弾制裁を発動しても、中国の対抗措置は600億ドル分の米製品への報復関税にとどまるなど弾切れ状態。さらにトランプ大統領は全輸入品への制裁も辞さない構えをみせている。

トランプ大統領としては、米国製品の購入を拡大させるなど、雇用増につながる譲歩を中国側から引き出すことができれば、11月の中間選挙に向けた支持層へのアピールになるのは事実だ。

一方で、米国が中国を敵視する背景には、ハイテク技術や知的財産、安全保障も絡む覇権争いが存在している。

中国経済に詳しい元週刊東洋経済編集長の勝又壽良氏は、「米中貿易戦争は、ビジネスだけの問題ではない。米国は腰をすえて中国を追い詰め、経済の骨抜きを図る戦略だろう」とみる。

中国封じ込めの動きも具体化してきた。豪政府は23日、「第5世代(5G)」と呼ばれる高速大容量通信網の整備に、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)とZTEが参加することを禁じた。「外国政府の違法な指示を受ける可能性が高い」会社が関与すれば、安全を確保できないと懸念を表明。名指しこそ避けたが、「親中」とみられていた豪政府が米国に歩調を合わせた形だ。

世界最大の市場を抱える中国ではあるが、見切りを付けようとする企業も出てきた。自動車大手のスズキは、中国での自動車生産について、撤退も視野に現地の合弁相手と協議を進めていることが分かった。中国企業との合弁解消で合意し、中国事業から撤退するとの報道もある。

スズキの子会社、マルチ・スズキはインドの乗用車市場で約50%と圧倒的なシェアを握っている。中国を追う巨大市場に成長しつつあるインド市場を軸に海外展開を拡大することになりそうだ。

ロイター通信は、米国の医療機器や農業用具などのメーカーが、中国から米国への生産移転比率を高めたり、中国以外の国からの調達に切り替えたり、雇用を米国に再移転するなどの動きを検討していると報じた。

前出の勝又氏は「中国では人件費が上昇し、電気代や土地代が米国を上回っているうえ、外資系企業に共産党組織の設置を義務付けられるという問題もある。外資系企業が中国を捨てる時期は、今回の米中貿易戦争によって早まる」と指摘する。

追い詰められつつある中国。米中貿易協議での展望が開けないどころか、中国が人民元を割安に保っている為替操作問題が指摘される恐れもあり、かえってヤブ蛇になりかねない。

米国向け輸出品の関税が引き上げられるうえ、人民元高が進めば、輸出品の競争力はダブルで打撃となってしまう。

中国は11月の米中間選挙後に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)や20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談を開き打開策を見いだしたいところだ。だが、米共和党が中間選挙で敗れた場合、トランプ大統領がさらに対中強硬策を先鋭化させる可能性もある。もはや手詰まりか。夕刊フジより

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