2018年5月19日土曜日

求む!外国人正社員

正社員の20%近くは外国人
正社員の20%近くは外国人
大阪府東大阪市にある製造工場。世界で初めてブラウン管テレビの枠組みをプラスチックで大量生産した老舗企業「大阪銘板」です。

工場を訪ねると、日本人に混じってアジア系の外国人の姿が…。90人いる正社員のうちの16人、実に20%近くが外国人です。将来は「全社員の半分が外国人になってもよい」と考えています。
 
実習生では戦力にならない
実習生では戦力にならない
外国人技能実習生も受け入れてきましたが
 
これまで「外国人」といえば技能実習生が主流でした。この会社でも、10年ほど前からインドネシアや中国、ベトナムなどから実習生を受け入れてきました。

しかし、日本で働けるのは最長で5年。時間をかけて仕事を教えても、独り立ちし始めるころに帰国してしまいます。金型の設計やプラスチックの形成など、日本人の技術者と同じような技能を持ち、会社の戦力になるまでにはもっと長い時間が必要です。そこで決断したのが、外国人を正社員として雇うことでした。
 
人手不足でモノが作れなくなる?!
 
この背景には、深刻化する人手不足があります。国内の就職戦線は売手市場で、応募者は数えるほどしか集まりません。せっかく採用した人も2~3日で辞めてしまうケースが続きました。プラスチックの製造は、200度から300度の高温で行う作業もあり、夏場の厳しい労働環境に耐えられなかったのです。

「このままでは、人がいないから仕事を断ることになりかねない」
 
正社員の門戸を開く
正社員の門戸を開く
会社は去年、初めてミャンマー人6人を正社員として雇い入れました。外国人を正社員として雇うには、実習生とは違った複雑な手続きが必要です。

まず、就労ビザを取得しなければなりません。会社が身元引受人となり、会社の決算などを記載した文書を入国管理局に提出。ミャンマー人の持つ知識と会社の業務が合致するかなど、審査を受けます。

さらに、基本給は原則、日本人並みにしなければなりません。実習生よりもコストはかさみますが、それでも、やる価値はあるといいます。
 
待遇は日本人と同じ
待遇は日本人と同じ
去年 採用されたソンさん
 
去年、採用されたミャンマー人の1人、ソンさん(24歳)。ミャンマーの技術大学を卒業後、日本語学校に入学し、そこで大阪銘板が社員を募集していることを知りました。

採用が決まった時は、外国に行くことの不安もありましたが、会社の取締役がミャンマーの両親の家にあいさつに来てくれたことで、迷いがなくなりました。

大阪での住まいは、会社の用意した1LDKのマンション。一緒に採用されたミャンマー人の女性と2人暮らしです。残業代込みの手取りは、月におよそ30万円。そのうち10万円を両親に仕送りしています。

年に2回のボーナスや、社会保険・年金も保障されています。職場では金型の設計を担当。先輩に教えてもらいながら仕事を覚える毎日です。ミャンマーでは身につけることができない高度な技術に触れられるのが、何よりのやりがいだといいます。
 
外国人にも幹部をめざしてほしい
 
「日本人が忘れてしまった情熱=ハングリー精神を持っている」

ソンさんたちの働きぶりは、会社で高く評価されています。教えられたことを素直に受け入れ、仕事を覚えることに貪欲で、飲み込みが早いと評判なのです。

会社はことし、人数を増やして10人のミャンマー人を採用しました。今後は、さらに増やすことも検討していて、管理職としてこの会社をひっぱるリーダーになってほしいと考えています。
 
高まる外国人社員のニーズ
高まる外国人社員のニーズ
セミナーは熱気にあふれていました
「外国人を正社員として採用したい」という企業は増えており、各地で企業向けセミナーが開かれています。

兵庫県の信用金庫で開かれたセミナーには、100社余りの中小企業が参加。東南アジアなど進出先で働いてくれる外国人を採用したい、と熱気にあふれていました。

講師の1人で、日本企業とミャンマーの人材の仲介をしている西垣充さんによると、ミャンマーでは毎年25万人近くが大学を卒業するものの、民主化されて間もないことから進出企業が少なく、就職先が限られているとのこと。経済が成熟していない今こそ、日本企業にとってよい人材を採用するチャンスだといいます。
 
人材をめぐる争奪戦
人材をめぐる争奪戦
西垣充さん
一方で、西垣さんは労働力を必要としているのは日本だけではない、と警鐘を鳴らしています。ミャンマーの若者は、シンガポールや中国、それにタイなどでも就職を希望しているため、近い将来、日本で働く外国人が減るおそれもあるというのです。

「優秀な外国人人材は、世界で争奪戦となっている。日本は選ぶ側ではなく、選ばれる側だということを認識して、外国人の給与水準や昇進速度などを考えていかなければならない」

外国人人材が日本の産業に欠かせない存在になる中、どうやって優秀な人材を獲得し、定着してもらうのか。企業だけでなく、国としても戦略を考える時がきているのかもしれない取材を通じてそう感じました。NHKニュースより

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