2018年1月28日日曜日

世界初の深海探査レースへ 日本のロボットが最終点検

深さ数千メートルの深海に眠る貴重な海底資源の開発につなげようと開かれる、世界初の深海探査レースの第1ラウンドが28日始まるのを前に、日本のチーム「KUROSHIO」がレース用に開発した水中探査ロボットの最終点検の様子を報道陣に公開しました。
世界初の深海探査レースは、アメリカの財団「Xプライズ」が開いているもので、ことし10月、水深4000メートルの深海で、24時間以内に東京ドーム5000個分を超える広さの海底地図を作る性能を競い合い、優勝チームには4億円を超える賞金が贈られます。

日本からは東京大学や海洋研究開発機構などがつくるチーム「KUROSHIO」が参加していて、28日から4日間、財団が委託した専門家でつくる審判団が来日し、ロボットにレースの目標を達成できる性能があるか調べる第1ラウンドが行われます。

これを前に「KUROSHIO」は、都内で報道陣を前に水中探査ロボットの最終点検の様子を公開しました。

イルカのような形をした探査ロボットは、全長3メートル、重さは350キロあります。レースでは3機のロボットが同時に深海をみずから動き回り、音波などを使って海底の地形を測定し、地図を作り上げていきます。

船の形をした無人ロボットにつながれて港を出たあと、地図の作成から帰港まですべて自動で行うということで、チームによりますと、こうしたシステムの実用化は世界でも初めてです。

レースを開催する財団では、こうした技術の開発を通じて、貴重な資源が眠る深海の探査が飛躍的に進むことを期待しているとしていて「KUROSHIO」の中谷武志チームリーダーは「第1ラウンドに向けて、多くの試験を積んできたので自信はある。10月のレースに出て実力を発揮したい」と話していました。
 
探査可能範囲は従来の10倍以上
 
光が届かない深海の探査には無人の探査ロボットなどが使われますが、これまでの技術では1日に探査できる範囲は10平方キロメートルほどでした。

今回の大会では24時間で250平方キロメートル以上を探査し、海底の地形図を作成することが求められていて、探査能力を従来の10倍以上に高める必要があります。

このため日本のチーム「KUROSHIO」は、3機の探査ロボットを同時に展開するシステムを開発しました。探査は出航から帰港まですべて自動で行われ、目標の海域まで船の形をした別のロボットで運ばれた探査ロボットは、センサーを使って障害物を避けながら、みずから進む方向を決めて自律的に探査を進めます。

そして、海底地形の測定や撮影を行ったあと、再び船の形をしたロボットが探査ロボットを回収し、帰港します。

また、バッテリーの消費を抑えるため、機体やプロペラを水の抵抗を減らす形に改良し、従来8時間程度だった稼働時間を大幅に伸ばしました。

チームによりますと、こうしたシステムは世界的にも前例がなく、実現まで10年以上かかると考えていたということですが、大会をきっかけに企業などから多くの研究資金が集まり、短期間で実現できたということです。

チームでは「日本の無人機の技術を世界にアピールする機会にしたい」と話しています。
 
レース開催の背景に海底資源
 
世界初の深海探査レースが開かれる背景には、スマートフォンやLED照明、ハイブリッド車などに欠かせない希少金属などの海底資源が相次いで確認される中、革新的な技術の開発によって、探査にかかる時間やコストを大幅に減らし、開発を進める狙いがあります。

日本の近海でも沖縄周辺や伊豆諸島から小笠原諸島付近にかけての海域で、銅や鉛、金や銀などが沈殿してできた「熱水鉱床」と呼ばれる地形が見つかっているほか、南鳥島の近くで希少金属のレアメタルやレアアースが近年、相次いで見つかっています。

また、海底の油田やガス田についても生産量を確保するために、これまであまり手が付けられていない水深300メートルより深い深海での開発が世界各地で急速に進んでいます。

ただ、探査に長い時間とコストがかかることが課題になっていて、広い範囲を短い時間で効率的に探査できるロボットなどの開発が世界的に急がれています。

アメリカの調査会社によりますと、深海で使える探査ロボットの世界全体の市場規模は、2015年にはおよそ200億円でしたが、2020年にはおよそ370億円に達すると予想され、5年間で2倍近くに急拡大すると見込まれています。

日本でも企業や研究機関が連携して探査コストを抑える新たなシステムの開発などが進められています。NHKニュースより

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