2018年1月30日火曜日

リチウムイオン電池の開発に貢献 吉野氏に日本国際賞

科学技術の分野で優れた業績をあげた研究者に贈られる「日本国際賞」のことしの受賞者に、携帯電話やパソコンなどに広く使われている「リチウムイオン電池」の開発に貢献した、大手化学メーカー、旭化成の名誉フェロー、吉野彰さんなどが選ばれました。
「日本国際賞」は、国際科学技術財団が科学技術の分野で優れた業績を挙げた研究者に毎年、贈っていて、ことしの受賞者には旭化成の名誉フェロー、吉野彰さん(70)が選ばれました。

吉野さんは、小型で充電ができる電池として昭和58年に現在の「リチウムイオン電池」の原型となる電池の開発に成功しました。

リチウムイオン電池はその後も改良が加えられ、ノートパソコンやスマートフォンのほか電気自動車でも欠かせない技術となっていて、社会に大きな影響を与えています。

吉野さんは「リチウムイオン電池は今も進歩を続けていて、今回の受賞をきっかけに若い研究者たちがさらなる技術革新をもたらしてくれるでしょう」と話しています。

このほかことしの「日本国際賞」には、生物の免疫機能のメカニズムを解明したアメリカ・エモリー大学のマックス・クーパー教授とオーストラリアのウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所のジャック・ミラー名誉教授も選ばれました。

「日本国際賞」の授賞式は、4月18日に東京の国立劇場で行われます。
 
スマホやPCにも 現代社会に欠かせないリチウムイオン電池
 
吉野彰さんが「リチウムイオン電池」の原型となる電池の開発に成功したのは、今から35年ほど前でした。リチウムを材料に用いた充電可能な電池は、1980年代から研究や開発が各地で進む一方、安全性などが課題となっていました。

現在の旭化成で研究者を努めていた吉野さんは、1983年に、プラスの電極にリチウムという金属を使い、マイナスの電極に電気を通すプラスチックを使うことで充電が可能な電池ができることを突き止めました。
さらにその後、マイナスの電極に炭素繊維を使うことで安全性を向上させ、高電圧で寿命の長い「リチウムイオン電池」の原型を開発し、1990年代初頭の実用化に大きく貢献しました。

リチウムイオン電池は年々性能が向上し、スマートフォンやパソコンなど幅広い分野で使われているほか、最近は電気自動車にも搭載され、現代社会に欠かせない技術となっています。
 
クーパー氏とミラー氏の業績
 
ことしの日本国際賞に選ばれたアメリカのマックス・クーパー教授とオーストラリアのジャック・ミラー名誉教授は、免疫機能の基本的な仕組みを解明し、さまざまな病気の治療薬の開発につながる免疫学の基礎を築きました。

一連の研究成果の端緒となったのは、ミラー名誉教授が1961年にマウスを使った実験で、ウイルスに感染した細胞などを直接攻撃する「Tリンパ球」を発見したことでした。
さらに1965年には、クーパー教授がニワトリを使った実験で、体内に侵入した病原体から抗体を作って身を守る「Bリンパ球」を発見しました。

2人の研究によって免疫機能の基本的な仕組みが明らかになり、現在の免疫学の基礎が築かれたことで、リウマチやアレルギーなど免疫に関わる多くの病気の解明に道が開かれたほか、最近ではがんの治療薬の開発にも応用されています。

受賞が決まったことを受けてクーパー教授は「免疫をめぐる研究は近い将来、すい臓がんや乳がんなどの治療法の確立につながるだろう」と話しています。
またミラー名誉教授は「今後は化学療法や放射線療法ではなく、免疫療法が病気を治療する上での主要な方法になるのではないか」と話しています。NHKニュースより

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