2017年7月12日水曜日

なぜ米公有地に2例目の慰安婦像は設置されたのか お祭りムードの除幕式の5日後に移設発表のワケ

米南部ジョージア州ブルックヘブン市の公園に6月30日、米公有地でカリフォルニア州グレンデール市に次いで2例目となる慰安婦像が設置された。韓国系住民で埋め尽くされた除幕式では、韓国人歌手によるステージが催されたり、慰安婦像の記念Tシャツまで販売されたりするなどお祭りムード一色となった。だが、除幕式からわずか5日後、市は他の大規模公園への移設計画を発表した。韓国系団体が持ち込んだ像設置をめぐり、市のドタバタ劇が続いている。

「スリー、ツー、ワン!」。30日の除幕式。プログラムの最後、ブルックヘブン市のジョン・アーンスト市長、韓国系団体の関係者らが黄色い布を取り払い、「慰安婦像」を披露すると大歓声がわき起こった。

感動のあまり涙を流す韓国系住民の姿も。大雨が降る中、記念撮影しようとする人が後絶たなかった。

除幕式では、慰安婦像をブルックヘブン市に寄贈したジョージア州アトランタの韓国系団体の幹部が、「われわれは政治的利益によって動いているのではない」と強調。また「これは韓国だけの問題ではない。(日本による)犠牲者は韓国だけでなく、中国、台湾、フィリピン、インドネシアなど少なくとも13カ国に上る」と持論を展開した。

州都アトランタの日本総領事館は、この日までに同市関係者に慰安婦問題に対する日本政府の立場を再三伝えてきたが、聞き入れられることはなかった。

韓国系住民の熱気に包まれる中、除幕式ではブルックヘブン市の全面的なサポートぶりも目立った。

アーンスト市長自ら司会を担当し、4人いる市議のうち3人が出席。地元の警察署長も登壇してあいさつした。会場では慰安婦像がデザインされた記念Tシャツが販売されていて、市の広報担当者が「Tシャツを販売しています! みなさん購入してください」と声を張り上げ“宣伝”する場面もみられた。

ブルックヘブン市は、州都アトランタ中心部から車で北西に約20分のところにある。2012年に誕生したばかりの都市で、人口は約5万人だ。

ジョージア州の韓国系住民は10万人以上とみられる。だが、ブルックヘブン市自体には大きな韓国人コミュニティーは存在せず、市によると、ヒスパニック(中南米)系が最も多く約24・8%、アジア系は約5・6%という。

なぜ、この地に建てられることになったのか。

アトランタの韓国系団体は3年前から像設置の準備を進めてきた。今年2月9日にはアトランタ中心部の「公民権・人権センター」敷地内への設置計画を発表したが、3月2日にセンター側が設置を許可しない方針を決定した。これを受け、韓国系団体は「日本政府が妨害した」と猛反発、別の場所での設置を目指し各自治体への働きかけをさらに強めていたという。

像設置に反対し、ブルックヘブン市にも直接、懸念を伝えたジョージア州のトム・テイラー下院議員(共和党)によると、「韓国系団体はジョージア州の多くの都市に像設置を要請していたが、断られていた」。ブルックヘブン市で“成功”した要因は、「全面的にサポートしてくれる市議を見つけたことが最も大きい」と指摘した。

4人の市議のうち1人が韓国系。この市議が5月23日に市議会に像設置を提案すると、あっという間に設置が決まった。

アーンスト市長は除幕式で、韓国系市議を「長年の友人」と紹介。韓国系市議は、アトランタでの設置計画が中止されたことに「とても失望した」と述べ、「(慰安婦像の)ホームを見つけるまでの困難を通じて、過去の悲劇により光を当てることができた」と話すと、ひときわ大きな拍手が送られた。

韓国系市議の後押しとともに、アトランタ周辺では、性産業が社会問題化しているという事情もある。米連邦捜査局(FBI)は2014年、ブルックヘブン市を含むアトランタ都市圏を、人身売買の犯罪が最も多発する都市に指定した。

アーンスト市長は、慰安婦問題を地域で起きている人身売買と関連づけている。像設置を「現在も続く人身売買の問題意識を高めるため」と繰り返し説明している。これに対して、前出のテイラー氏は「人身売買は世界中で起きている問題だ。韓国系団体の言い分だけを聞いて、特定の国の問題として焦点を絞るべきではない」と話す。一方で、市内には、売春の温床となっていると長年指摘されているストリップクラブが存在し、市議会は14年、同クラブの営業を当面認める決定を下した。

テイラー氏は「市は、ストリップクラブの営業を認めておいて、『人身売買だ』として慰安婦を問題視することは信じられない」と話すなど、市の“矛盾”についても指摘した。

ブルックヘブン市の像設置問題を通じて浮かび上がるのは、市の混乱ぶりだ。除幕式のわずか5日後の7月5日、別の大規模公園への移設を発表した。

現在設置されている公園周辺で交通渋滞が発生したとして、市側は「駐車場や利便性など像の見学者によりよい対応をするため」と移設の理由を説明しているが、周辺の米国人住民による反対運動が影響したとの見方が強い。

公園の維持費は、周辺の95世帯でつくる管理組合が負担しており、一部の住民らは「設置決定まで何の説明も受けていなかった」と猛反発。住民の50代女性は除幕式の前に、産経新聞の取材にこう怒りをぶちまけた。

「本当に迷惑している。裏庭のように使っている公園で、どこの国であれ政治問題を持ち込んでほしくない。市の対応は信じられない。どのような法的措置が可能か弁護士に相談しているし、次の選挙で、市議や市長を落選させるために活動していく」

地元関係者によると、市は、現地日本人だけでなく、米国人の周辺住民からも反発の声が上がることを想定していなかったとされる。

「アジア人の比率が少ないため、これまで日本人も韓国人も助け合って生活してきた」(現地日本人)というブルックヘブン市。急ピッチで進められた慰安婦像計画は、さまざまな軋轢(あつれき)を生じさせている。

■ブルックヘブン市■ 米南部ジョージア州の州都アトランタの北方郊外にある市。住民による投票を経て2012年に誕生した。約5万人の人口は所属するディカーブ郡下の自治体で最大規模。市長のアーンスト氏は16年1月に着任した。  産経ニュースより

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