北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の脅威が急速に増大する中、トランプ米政権と議会がミサイル防衛(MD)体制の大幅強化に向けた動きを加速させたことが分かった。切り札の一つは、ミサイル迎撃能力の向上に向けて宇宙空間でのミサイル監視システムを導入する計画だ。
計画は、地球の周囲の宇宙空間に多数の衛星センサーを配備して敵対国の弾道ミサイルを発射段階から迎撃まで全地球規模で監視できるシステムを確立。その上で、米本土の地上配備型迎撃ミサイル(GBI)、グアム島や韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD)や、米海軍や海上自衛隊のイージス弾道ミサイル防衛といった既存の迎撃システムと統合させる。
従来はそれぞれの迎撃システムが独自のレーダー監視体制を構築していたのを、ミサイルの探知・追尾情報を一元化することで標的の情報を適切に把握し、米国と同盟国を狙うミサイルへの対処に向けた正確な判断をより速く下すことができるようになる。
米軍の核戦力を統合運用する戦略軍のハイテン司令官は4月、上院軍事委員会の公聴会で「米国は(ミサイルの)識別能力を有したセンサーを宇宙空間に早急に配備する必要がある」と指摘。国防総省が今年末を目標に策定中の政策指針「弾道ミサイル防衛の見直し」(BMDR)にも衛星センサーの配備が盛り込まれる見通しだ。
一連の動きと並行して、上下両院は2018会計年度(17年10月~18年9月)の国防権限法案に衛星センサーの研究と実用化に向けた予算措置を求める条項をそれぞれ盛り込んだ。
上院で同条項を発議したダン・サリバン議員(アラスカ州選出)は26日、政策研究機関「ヘリテージ財団」で講演し、衛星センサーは「米国にミサイル監視の『まばたきしない目』を与える」と強調した。
同条項はまた、今年末までにアラスカ州に40基、カリフォルニア州に4基の配備体制となるGBIに関し、アラスカ州に14基の追加配備と14基の実験用迎撃ミサイルの調達を要求。国防総省も、西海岸に加えて中西部や東海岸にもGBIを配備し、全土で計100基体制を確立させる可能性について研究中という。
一方、下院の国防権限法案は、宇宙空間での作戦能力をさらに発展させ、衛星に迎撃ミサイルを装備して弾道ミサイルを迎撃する実験を始めるよう国防総省に求める条項を盛り込んだ。
レーガン元政権の「スターウオーズ計画」の再来ともいえる下院の構想には実現性を疑問視する声も強いものの、北朝鮮の核の脅威に積極的に超党派で対処しようとする機運はこれまで以上に高まっている。 イザより
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2017年7月28日金曜日
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