2017年7月31日月曜日

日本刀の最高傑作「大包平」とは

日本刀には「名刀」として、その名が広く知られている刀が複数存在しています。明治時代以降に複数の刀剣関係者の間で定められたという、刀の出来栄えだけではなく由緒や逸話も含めた上で選ばれた名刀5振り「天下五剣」がその代表格ですが、それら以上の「現存するすべての日本刀中の最高傑作」と呼ばれる1振り、それが今回ご紹介する「大包平(おおかねひら)」です。

■国宝中の国宝、西の横綱、日本刀の最高傑作
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大包平「e国宝より引用」より引用
 
日本刀には「横綱」と称される名刀が2振りあり、「天下五剣」の中でも特に「東の横綱」と呼ばれる「童子切安綱(どうじきり・やすつな)」に対して、「西の横綱」と呼ばれているのがこの「大包平」となっています。

大包平は国宝指定を受けている太刀で、指定名称「太刀 銘 備前国包平作(名物 大包平)」と登録されています。現在日本で国宝指定されている日本刀は100本以上ありますが、その中でも大包平は「国宝中の国宝」とも呼ばれており、これら数々の称号を持ってすれば「大包平は日本一の名刀」と言っても過言ではありません。

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6文字の銘が切られている大包平の茎部分の拡大「e国宝より引用」より引用
 
この「大包平」という通称の由来は、「刀匠包平の作った刀には珍しく、普通なら2文字"包平"である所を、他には見られない6文字"備前国包平作"と銘が切られている」というところから「6文字も銘を切ったのは、この刀が包平作の中でも会心の出来であったためだろう」と考えられており、そこから「包平の作った刀でも最高の包平」という意味で「大」が付けられた「大包平」と呼ばれているのです。

■現代では再現不可能な作刀技術
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太刀 銘 安綱(名物 童子切安綱)。大包平に並ぶ東の横綱「Wikimedia Commons」より引用
 
刀匠包平は平安時代末期、備前国(現在の岡山県東部)で活動していた刀匠です。備前国には包平の他にも高平(たかひら)、助平(すけひら)という別の名刀匠が同時期に存在しており、3人併せて「備前三平」などと呼ばれていたようです。この中でも現代に残されている刀が多く、知名度も高いのが包平でした。
 
さて、刀剣評論家や愛好家から「国宝中の国宝」とまで呼ばれる、この大包平の何がすごいのか。日本刀の評価のひとつである、美術品として見た外見の美しさもさることながら、刀身が長いだけでなく幅広(刀身の横幅が広いこと)に作られた太刀であるにも関わらず、重量がとても軽いことが挙げられます。

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一般的な打刀と拵え「Wikimedia Commons」より引用
 
大包平の刀身のみの重さは約1.35kgと、太刀としては非常に軽いもので、江戸時代の一般的な長さの打刀(刃長約60~70cm。大包平は刃長約90cm)の刀身に、時代劇で見られる日本刀と同じような柄や鞘、鍔などの拵えを付けたものとほぼ同じ重量です。
 
これは他の同じ大きさの太刀に比べて、大包平の刀身が薄く作られているためで、その分だけ重量が減っている、という寸法です。
 
このように刀身が薄く軽く丈夫に作られているだけではなく、刀身全体の重心バランスが良いため、重さを感じず振るいやすくなっているという神がかり的な作刀技術でもって、大包平は高い評価を得ているのです。
 
また『日本名刀大図鑑』(新人物往来社)によると、現代の刀匠が同じ幅と長さの太刀を作るとなれば、強度を保つために刀身を厚くせざるを得ず、どうしても2kg以上の重さになってしまうとのことです。
 
刀匠包平がどう思っていたかは想像するしかありませんが、大包平が「会心の出来」とされる理由は、ある意味では「包平自身であっても、もう1度同じものが作れるとは思えない奇跡の刀」ということなのかもしれません。
 
今回はこのぐらいに致しまして、次回は大包平という刀のエピソードや、大包平に付けられた価値についてご紹介して行きたいと思います。  トカナより

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