ブータンの実効支配下にあるドクラム高原はインドにとって国境警備の要塞。中国領のチベット自治区からインド領のシッキム州への経由地であるうえ、中国に支配されると、インドの北東部7州と本土を結ぶ陸路が遮断されるリスクが高まる。高原の面積は約100平方キロメートルしかなく、豪雪地帯で自然環境と交通が極めて悪劣で、インド軍が数カ所の小型軍事拠点を設けている。
中国の軍事専門家は「中国が国内につなぐ軍用道路を開通させれば、ドクラム高地を確実に実効支配できる」と分析した。6月16日、現場で人間の盾を作って工事を止めようとするインド軍が中国軍ともみ合いに、中国側は重機でインド軍の塹壕2箇所を破壊した。以来、工事が中断したようすで、インド軍は中国軍から100メートルあまり離れた場所に設営し、緊張が続いている。
両国政府は譲らない姿勢をみせている。軍関係者が国境線で一度対話の場を設けたが、物別れに終わった。双方とも軍隊を増やし、中国軍がチベット自治区で一連の実弾演習を実施するなどインド軍の撤退を求めて圧力をかけている。インド政府は、中国が国境付近でインフラの拡充を進め、インドと隣国ブータンの安全を脅かしているとして、中国政府を非難。モディ首相は7月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議で習近平国家主席との首脳会談をキャンセルした。
問題の解決にインド側は交渉を望んでいるが、中国外務省は「全責任はインドにあるため、中国はいかなる妥協もしない」とあくまでもインド軍の撤退が先だと主張。米国などの諸外国は平和的手段による解決を促している。
両国メディアが世論戦を繰り広げている。
一部の情報によると、国境地帯の中国軍は約2万人で、インド軍は8倍強の十数万人。中国官製メディアは、軍が今月中旬からチベット自治区で実弾演習を2回以上行ったと報じ、「インドと戦う準備ができている」と警告を発した。人員・物資輸送の両面で地理の優勢を持つインドに軍事力を見せつけるためと思われている。
両国国境のほぼ全域がヒマラヤ山脈といった高山地帯で国境線はあいまいのため、領土問題が20世紀はじめから生じた。中国共産党政権下の1962年、中印国境紛争が起き中国が勝利し、領土をわずかに増やした。中国軍事専門家は「この戦いは、毛沢東が政権発足直後から13年間にわたって人員&物資の準備を行ったことでやっと勝ったもの」と指摘し、両国が戦争する場合、地理位置の劣勢により人員や物資の補給が難しい中国の勝算は低いと示唆した。
インド実効支配下のシッキム州の帰属をめぐっても両国間の小競り合いが絶えない。2005年の胡錦濤政権時代に、「シッキムの主権はインドに、チベットの主権は中国にある」とする両国間の合意が交わされたが、2014年、中国軍がシッキム州に一時侵入し、両軍が約2週間対峙した。今回の緊張事態をうけて、中国側は先の合意を見直すこともありうるとほのめかした。
インド軍がドクラムから撤退しないなら、中国はどう出るのか。今後の展開が注目されている。大紀元日本より
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