2018年5月21日月曜日

MRJ事業化 メード・イン・ジャパンの復権へ正念場

どの空港でも旅客機を眺めるデッキはにぎわう。翼のない私たちに代わり、飛び立ち、舞い降りる姿は大空へのロマンをくすぐる。それが国産機なら、なおさらだ。

三菱重工は、MRJ初納入が最大二年遅れて二〇二〇年半ばになると発表した昨年一月以降、安全性を高めるため機体設計の大幅な見直しを進めてきた。現状について宮永俊一社長は「だいぶもやは晴れてきた」と語っている。今年七月には英航空ショーでデモ飛行を予定しており、事業化を危ぶむ声を払拭(ふっしょく)する機会としたい。

日本の航空機産業は、欧米の完成機メーカーの下請けが長い。関係する中小企業が多い中部地方の場合、米ボーイングを頂点としたピラミッド型の産業構造があり、まだ三菱重工も翼などを造る一次取引先の立場である。

自動車に次ぐ産業の育成が叫ばれる中、完成機メーカーが日本に生まれる意義は大きい。ハイテクの固まりの旅客機を造り上げるメーカーは世界的に限られる上、地域路線の増加から小型ジェット機は需要の伸びが見込まれる。

ただ、到底楽観できる状況にはない。MRJは五度にわたる初納入延期で、期待を裏切り続けてきた。開発と営業を担う三菱航空機(愛知県豊山町)は約四百機を受注しているが、納入ゼロなので売り上げはない。開発費だけが膨らんだ状況で、負債が資産を上回る債務超過にあり、その額は三月末時点で約一千億円に。このため親会社の三菱重工は来年三月までに資本増強し経営改善を図る。

開発面では日米など関係国での型式証明の取得に向け、飛行試験のピッチを上げる。量産に向けた体制づくりも急ぐが、時間の余裕はない。しかも競合相手のブラジルのエンブラエルはボーイングと提携交渉に入り、市場環境が大きく変わる可能性がある。

生みの苦しみは続くものの、乗り越えた先に得られる糧は一企業の収益だけではない。日本のものづくりは相次ぐ品質不正の発覚で信頼が揺らいだばかり。それだけにMRJ事業化は「メード・イン・ジャパン」の復権にかかわる。その翼は国民の夢や期待も乗せて羽ばたく。関係者は、そのことを改めて肝に銘じてほしい。中日新聞より

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