2017年7月12日水曜日

食肉市場で働く人々への差別、その裏側

※本記事は食肉市場全体ではなく、あくまでも取材者の体験を元に構成されています。
 
以前TOCANAで掲載された記事『「養豚業者は“豚トロ”を絶対に食べない」は本当か?』にもあるように、食肉業界には消費者にとって“知られざる秘密”があるようだ。

筆者の友人に、2年ほど前まで東京都の管理する食肉市場関係の仕事に従事していた人物がいる。彼は、以前から食肉に関する裏話を知っている様子だったので、今回詳しく聞いてみた。

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イメージ画像:「Thinkstock」より

■と畜のバイトは6割がヤーさん

食肉市場ってどんなところなの?

「東京都が管理する食肉センター内は、大きく、【都が管理すると畜部門】と【民間業者が管理すると畜後の肉を扱う部門】の2つに分かれてるんだよ。と畜は都の人間しかできないから都の管轄で、と畜後は民間の業者が共同出資した「内臓専門」とか「枝肉専門」の部門とか、色んな部門に細分化されてるんだよね」

どんな人たちがそこで働いてるの?

「東京都がやっている、と畜にかかわるアルバイトなんだよ。でも、“みなし公務員”だから社会保障制度もあるしって感じで、歳いってる人の6割ぐらいはヤーさんだったかな(笑)」

でも、ヤーさんかどうかはわかんないでしょ?

「わかるよ。着替えの部屋とか一緒で、普通に刺青いれてるし『いやー、俺も昔はさぁ』なんて色々話してくれたりしたから」

つまり、ヤーさんの天下り先ってことなの?

「そうとも考えられるかもね」

と言うことは、東京都とヤーさんが癒着してるってこと?

「どうなんだろうね。ほんとうに何人もいるけどねぇ(笑)」

“みなし公務員”ってことは、年賀状の郵便配達員とかと一緒なわけでしょ? それにヤーさんは雇えないんじゃ?

「いや、昔は年賀状の配達員にもいたって聞いたけどね。と畜のほうは、ヤーさんから組織的に飛ばされたり派遣されてるってわけじゃなくて、破門された人とか足を洗った人がやるみたい。

確証があるわけじゃないけど、東京都とヤーさんが繋がってるように思えちゃうのは、“みなし公務員”のアルバイトの中で、もともと何々組にいたっていう繋がりができていたりするから。そのヤーさんたちも、俺が入った頃で10年とか20年とか働いているベテランの人たちだったし、そういうこともあるのかもね」
 
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イメージ画像:「Thinkstock」より
 
■ヤーさんにしか捌けないものがある
 
どこぞの組長さんとかが、東京都と繋がってることはあるのかね? ヤーさんとの“つながり”は受け継がれてるのかな?
 
「受け継がれてるっていうよりは、そもそも、そっちの筋の人じゃないと捌けないものもあるんだよ」
 
どういう意味?
 
「たとえば、と畜では豚の頭を切り落として、体とは分けて流通させるんだ。体の方を枝肉っていうんだけど、枝肉は枝肉で流通して、頭は頭だけで流通する。
頭の方は、ネタで言うと『カシラ』っていうこめかみの肉が取れるんだけど、取りにくい部位だし、捨てちゃうようなものなんだよね。でも、やきとんとかだと『カシラ』だけは絶対に欠かせない部位でさ。そういうものだけを集めて捌いてる人が昔からいたんだよ。それが元々ヤーさんだったんじゃないかなって思うんだけどね」
 
被差別部落や韓国・朝鮮の人たちもそういうのやってたと思うんだけど、ヤーさんもやってたってことなのかな。

■「誰もやりたがらない仕事」に見る差別の構造
 
いま、食肉市場で働いているヤーさんたちは、そこで何か変なことしてるわけじゃないよね?
 
「まったく変なことなんかしてないよ。俺が知り合った人たちは、豚肉の洗浄をしてる人で、至って普通の人だったよ。
 
さっきも言った通り、食肉センター内は東京都の管轄と市場会社の管轄に分かれてるんだよ。同じビルの中で、ここからコッチは東京都ですよ、コッチは市場会社ですよって。
 
その市場会社には俺も面接に行ったことがあって。市場会社は東京都の管理でと畜して、それを市場でセリにかけたりするちゃんとした会社なんだけど、刺青がダメじゃないんだよね」
 
あまり人前に出ないからっていうのもあるかもね。
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イメージ画像:「Thinkstock」より
 
「まあ、職場では白衣着てマスクしてるから、刺青はわかんないんだよね。だから働いてても問題ないのかもしれない。でも、昔東京都の清掃局の仕事をしにいったときは『刺青入ってるからダメ』って言われたんだけどね。清掃局はダメで、市場会社は刺青OKって。(笑)
 
と畜場は着替えるところがみんな一緒なんだけど、血がついたりするから絶対に風呂があって、そこは昔の銭湯みたいに刺青だらけだよ。俺は少しだけなんだけどバッチリ入ってる人もたくさんいて、『兄ちゃんはオシャレで入れてんのか』って話しかけてきた人と仲良くなったり。(笑)
 
それで興味が沸いてどんどん話を聞いたら、その人は60歳手前ぐらいの人だったんだけど『昔からこういうところには俺たちみたいなのがいるんだよ』って言ってたね。『みんながやりたがらない仕事を俺たちみたいなのがやってるんだよ』ってね」
 
「誰もやりたがらない」っていうところが、被差別部落とかの人たちの状況に似ている感じがするなぁ。
 
「生業が成立してて差別されたのか、被差別の場所に住んでたから生業が決まったのかは違うと思うんだ。ただ『誰もやりたがらない仕事をやる』っていう点だけを見れば、被差別の世界とヤーさんの世界は似ていると思うんだけどね。これがずっと続いてるところは、都内にはもうあんまり残ってないよね」 トカナより

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