2017年7月4日火曜日

赤ちゃん、今年4万人減? 出生数さらに下降

子供がどんどん減っていく。統計を取り始めた明治32年以降、年間出生数が昨年初めて100万人を切り、97万6979人となったことが社会に衝撃を与えたが、今年6月末までに公表された月間の人口動態統計速報を見ると、出生数はさらに落ち込んでいる。4カ月で前年から計1万4772人減少、年間では約4万4千人の赤ちゃんが減る計算になる。このまま続けば、減少率は平成に入って最低となるマイナス4・5%。加速する少子化に社会は対応できるだろうか。

ベビーブームの3分の1

「極めて深刻な問題だ。結婚や子育てを阻害する非正規雇用労働者の経済的不安定、子育ての負担を取り除く」。菅義偉官房長官は、昨年の出生数が公表された6月2日の記者会見でこう危機感を述べた。

進行度合いは増している。厚生労働省が毎月発表している出生数の速報値によると、前年比で今年1月=2885人、2月=5594人、3月=2803人、4月=3440人の減少。前年の2月はうるう年があった影響があるものの、17年のマイナス4・3%を除くと、うるう年翌年の減少率はほぼマイナス1%台に収まっており、今年は減少率が更新されるかに注目が集まっている。

出生数の年次推移を見ると、ピークは「団塊の世代」が生まれた第一次ベビーブーム(昭和22〜24年)があった24年の269万6638人。今はこの3分の1に迫っている。

第二次ベビーブーム(昭和46〜49年)で、209万1983人を記録した48年に二つ目のピークを迎えた後は減少傾向に。平成27年は5年ぶりに増加したが、28年は100万人を切る歴史的事態になった。

人口維持は「2・07」

「出産に当たる人口は年々減少している。合計特殊出生率が前年と同じと仮定しても、減少してしまう。出生数がもう少し下がっていくのは多少なりとも予想される」。厚労省の人口統計担当、広瀬滋樹参事官はこう見通す。

1人の女性が生涯に産むと見込まれる子供の数を示す合計特殊出生率は28年が1・44で、前年より0・01ポイント低下した。政府は50年後の人口1億人維持を目指し、2020年代半ばの出生率「1・8」に引き上げる目標を掲げる。ただ、人口維持に必要とされるのは「2・07」で、昭和48年(2・14)以降、その数値を超したことはない。

出生数に特に大きく影響しているのが、主な出産世代とされる20〜30代の女性の減少や、戦後最少となった結婚件数だ。厚労省は「団塊ジュニア世代が40代となり、主な出産世代ではなくなった」と分析する。

28年の人口動態統計によると、5歳ごとの母の年齢別では、第1子を産んだ母で増えているのは40歳以上のみ。第1子出生時の母の平均年齢は上昇傾向で、昭和50年は25・7歳だったが、平成7年=27・5歳、17年=29・1歳、28年=30・7歳となり、40年間で5歳も上がった。

「こども保険」は切り札か

出生減対策には、安心して結婚、出産、子育てができる環境づくりが不可欠だ。だからこそ、政府は出生数が100万人を割ったことを公表したのと同時に待機児童解消を目指すプランを公表。新たに22万人分の受け皿確保を目指したほか、親からの保育サービスの相談にのる「保育コンシェルジュ」の普及を盛り込んだ。だが、予算の手当てはされていない。

日本の社会保障は従来、高齢者向けが重要視されている。今年度の社会保障関係予算約32兆円のうち、少子化対策費は約2兆円とわずか6%でしかない。

このため、幼児教育や保育の費用をまかなう「こども保険」構想が、小泉進次郎衆院議員ら若手の提案で注目を集めている。

ただ「取りやすいところから取るというやり方だ」(経済同友会の小林喜光代表幹事)などと批判が噴出しており、制度化には紆余(うよ)曲折が予想される。 
産経ニュースより

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