2017年7月12日水曜日

G20で判明!米国でいま、「対日強硬論」が激化している

G20随行団で分かる米政権内の権力構図

7月7~8日、ドイツ北西部のハンブルクで主要20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれた。

ドナルド・トランプ米大統領にとって、5月下旬にイタリアのシチリア島タオルミナで開催された主要7カ国(G7)首脳会議出席以来2度目の国際舞台である。

トランプ大統領はドイツ入りに先立つ6日午前(日本時間)、ポーランドの首都ワルシャワを訪れ、同大統領に親近感を抱く保守系のアンジェイ・ドゥダ大統領と会談。さらにトランプ大統領は演説の中で、米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟欧州諸国の防衛に責任を有していると明言した。

大統領外遊に先立ちワシントン・ウォッチャーの関心は、大統領の随行メンバーに集中した。現在のトランプ政権の権力構図が読み取れるからだ。
 
ポーランド訪問に同行したのは、レックス・ティラーソン国務長官、スティーブン・ムニューチン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ヒューバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問、そして大統領のシェルパ(個人代表)のエバレット・アイゼンスタット大統領次席補佐官(国際経済担当)らである。

留守役はマイク・ペンス副大統領を始め、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官、ジェームズ・マティス国防長官、ゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、スティーブン・バノン大統領首席戦略官ら。

政権ナンバー2のペンス副大統領がホワイトハウスに残るのは当然である。著しく存在感が低下しているプリーバス首席補佐官に声がかからなかったのも理解できる。

北朝鮮の「ICBM発射」対応で国防総省(ペンタゴン)で指揮を執らなければならないマティス国防長官はワシントンから離れることはできない。そして、今や国際経済政策だけではなく通商・金融政策に関しても発言力を強めているコーンNEC委員長もホワイトハウスから各省庁の要路に指示を発している。

「バノン復権」説は読み違い

問題視すべきは、”お騒がせ”バノン首席戦略官である。対中強硬派で知られるバノン氏もまた声がかからなかった。これまで何回か本コラムで、ホワイトハウス内での大統領の娘婿・クシュナー上級顧問と大統領選勝利に功績があったバノン首席戦略官の熾烈な権力抗争について言及した。

ところが日本のマスコミはワシントン発で、トランプ大統領が「パリ協定」からの離脱決断を行った裏面でバノン氏が大きな役割を果たしたことから、精彩を欠いていたとされる同氏が復権したと伝えてきている。

確かに、クシュナー氏は夫人のイバンカさんともども「パリ協定」残留をトランプ大統領に進言したが、退けられた。

安倍首相訪米時の米閣僚団
安倍首相訪米時の米閣僚団。イバンカさんを挟んで手前がバノン氏、奥がクシュナー氏(Photo by Getty Images)

だが、クシュナー、バノン両氏の影響力が逆転したというのは事実ではない。依然としてクシュナー氏は大統領が最も信を置く最側近である。

それどころか、大統領長女でありクシュナー夫人のイバンカさんは、大統領補佐官に就任後、ホワイトハウスのウエストウィング(西棟)2階の最も広い執務室を占めていたピーター・ナバロ前国家通商会議(NTC)委員長(現在は通商局長に格下げ)を追い出して自分の執務室にしているのだ。因みに、対中強硬派のナバロ氏はバノン氏の盟友である。

いま日本が組むべき相手

ここで注視しておくべきは、こうしたコーンNEC委員長やクシュナー・イバンカ夫妻など現実派がホワイトハウス内で権力を掌握したことである。そしてそれが、トランプ政権が今後の通商・貿易政策でロス商務長官とロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が主導する対日強硬姿勢の歯止めとなり得るのだ。

では、安倍政権にクシュナー氏と直接のパイプを構築している人物がいるのか。佐々江賢一郎駐米大使は昨年11月の大統領選前後からアクセスを果たして、それなりの信頼関係を確立したと言われている。

他方、安倍官邸のキーパーソンである今井尚哉首相秘書官(政務)は、2月の安倍首相訪米直前に2回ワシントンを訪れ、クシュナー氏と会談している。秋葉剛男外務審議官(政務)を伴った2回目は首相特使としての訪米だった。

毀誉褒貶相半ばする今井首相”首席”秘書官だが、今夏以降、麻生、ペンス両氏のイニシアチブで本格化する日米経済対話の前に、同秘書官を再び首相特使としてワシントンに派遣してクシュナー氏と擦り合わせを行う必要があるのではないか。それほどトランプ政権の今後の対日通商・貿易攻勢は厳しいものになるからだ。  現代ビジネスより

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