国立環境研究所の外来生物研究プロジェクト・リーダーである五箇公一先生が描いたヒアリ
6月27日、東京港・大井埠頭(東京都品川区)で陸揚げされた中国・三山港からのコンテナ内部で、特定外来生物のヒアリ1匹が発見された。その後、環境省がコンテナを詳しく調べたところ、さらに100匹以上が確認されたという。1カ月前の記事で伝えたように、ヒアリが国内で初めて見つかったのは5月下旬に神戸港から兵庫県尼崎市に運ばれたコンテナの中だったが、その後も名古屋港、大阪市の南港などで続々と発見される事態に至っている。今回は、ヒアリの脅威について詳しく解説するとともに、「自らヒアリの大群に刺された男」「ヒアリを食べるタイ人」「ヒアリのコロニーを“アート”にしてしまう芸術家」など、ビックリ仰天の話題もあわせて紹介しよう。
■ヒアリの脅威、その基本情報
画像は「Wikipedia」より引用
ヒアリ(別名:アカヒアリ)は、南米大陸を故郷とするハチ目アリ科フタフシアリ亜科に属するアリの一種。英語では“Red imported fire ant”、漢字では“火蟻”と書くが、刺されると火傷のような激しい痛みをもたらすことに由来する。体長は2~6mm、その身体は主に赤茶色だ。
ヒアリに刺されると、まずその部分が変色して腫れ、激しく痛むほか水ぶくれができるなど、ヤケドのような症状を示す。発作にまで至るケースは5%以下で、すぐに治療を受ければ命に別状はない場合がほとんどだが、近くに医療機関がない場所で刺されると、治療を受けられず死亡することもある。
■ヒアリの能力を物語る驚異的映像
さて、米国で2015年に公開されたマーベル・コミックによる映画『アントマン』では、劇中でたくさんのアリが群をなして橋を作ったり、いかだを作ったりするシーンが描かれていたが、これは実際にヒアリの群れが見せる行動に基づくものなのだ。下の動画は、ヒアリの群れが水の上でいかだを形成している時に、上から押しても沈まないことを示す実験映像だ。
次の動画は、前方に数cmの空間があるため渡れなくなっているところを、ヒアリたちが身体を結びけて“橋”を作り、渡ろうとしている光景だ。よく見ると何匹かのヒアリが犠牲になって落下しているようだが、それでもめげずに橋を完成させている。
画像は「Wikipedia」より引用
実は日本を代表する世見者(予言者)の松原照子氏が、2015年8月10日に「外来種生物がもたらすもの」と題したブログで、「『ヒアリが全世界で大量発生する日が来ます』と、不思議な世界の方が心配されています。このアリに刺されると子供やお年寄りは重篤な症状になるともいわれます。大人達も例外ではないとも話されます。このヒアリの侵略をどれだけ我国は防げるのか疑問です」と記していたのだ。国内のメディアが、まだヒアリに注目していなかった時期から、日本に次々とヒアリが襲来する未来を予見していたのだろうか。
■もしもヒアリに刺されたら、手で払うな!
ヒアリの特長として、地上にマウンド状のコロニー(巣)を作るため、容易に見つけやすい点が挙げられる。もしも身近な環境でヒアリ塚を見つけたら、決して安易に近づいてコロニーを壊そうとしてはいけない。彼らを怒らせて、体中を刺されることにつながりかねないからだ。
画像は「YouTube」より引用
では、それでもヒアリに刺されてしまった時には、どのように対処すべきなのだろうか。たとえば、腕や足を刺されても、決して手で払ってはいけないのだという。手で払おうとすると、さらにその手を刺される危険があるため、米国などでは体を大きく揺すって振り払うことが常識となっており、この動作には“Fire ant dance”という名前も与えられている。傍から見ると「みっともない」と思われるかもしれないが、重度のアナフィラキシーショックではないにしても、忌まわしい痛みが1カ月も続くことがあるというのだから、恥も外聞も捨てなければならない。もちろん、その後で医療機関に直行すべきことは言うまでもない。
■ヒアリを恐れない無謀なチャレンジ
・ ヒアリの群れに刺されまくってみた男
さて、ここからは恐ろしいヒアリに対してビックリ仰天な行動に出た人々を紹介したい。まずは米フロリダ州で、なにを思ったのか、自らヒアリのコロニーに手を突っ込み、無数の群れに刺されて60秒にわたり耐え抜いた男性だ。前置きが長い動画だが、ヒアリに刺される光景は3:00前後から始まる。
男性はその後、1週間ほど激痛に苦しみ、水ぶくれは1カ月ほど続いたそうだ。これこそ正真正銘の“体を張った”ユーチューバーといえるが、そのおかげで(?)動画の再生回数は1千万回を超えている。
・ ヒアリを生で食べる女
次は、タイ東北部のブリーラム県で撮影された動画だ。この県が属する「イサーン」と呼ばれる地方は、米などの作物が育ちにくい環境にあり、昔から貴重なタンパク源として昆虫などのさまざまな「ゲテモノ」が習慣的に食べられてきた。そしてなんと、現地住民はヒアリまでも生で食べてしまうという。映像には、ヒアリの巣を手づかみで口へと運び、美味しそうな表情で食べる女性の姿が収められている。タイ人である筆者の妻に確認したところ、白く映っているものはヒアリの幼虫ではないかという。
最後に紹介する動画は、相当なインパクトかもしれない。ヒアリのコロニーに、高温で溶かしたアルミニウムを大量に注ぎ込むというものだ。ヒアリ撲滅のための対策なのかもしれないが、その結果として驚くべき“作品”が生まれるのだ。とにかく、3分弱ほどの動画を最後まで見ていただきたい。
コロニーに形成された無数の通路が、銀色の輝きを放ちつつ浮き出ており、たしかに飾ってみたくなるほどの美しさをたたえている。海外では、昔からアリの巣にアルミを流し込む駆除が行われていたようだが、この動画には「もしもあなたの家に溶けたアルミが流し込まれたら、どうしますか?」など批判のコメントも多数寄せられている。世界各国で多くの被害を生み出しているヒアリだが、この“大量虐殺”はインパクトが強すぎて、賛否両論が巻き起こっているようだ。
この1~2カ月のうちに、まるで「次のターゲットは日本だ」とでも言わんばかりに続々と上陸が発覚しているヒアリ。今後定着してしまうかどうかは、国家レベルでの対策にかかっていると言えそうだ。手遅れにならないように、さまざまな措置が講じられることを願ってやまない。 トカナより
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