景気の実感を示す「業況判断指数(DI)」は、「大企業製造業」が三カ月前から五ポイント上昇のプラス一七と三・四半期連続で改善し、「大企業非製造業」も三ポイント上昇のプラス二三と二・四半期連続で良くなった。だが、先行きは中小企業を含めて厳しくみており、回復の力強さには欠ける。
東京都内の中小企業でコンピューター保守を手掛けるコスモメディア(荒川区)の村越裕之社長(55)は「仕事を受注できても従業員が足りない」と現状を説明する。業界の仲間と人材を融通し合いしのいでいる。村越社長は「人が確保できれば事業の拡大にも打って出られるのだが」と悩みを明かした。
短観で人手が「過剰」とみる企業の割合から「不足」の割合を差し引いた「雇用人員判断DI」は、リーマン・ショックによる景気の悪化でいったん過剰に振れた後、人口の減少で不足感が強まっている。六月は全企業の合計でマイナス二五と、バブルの余韻が残る一九九二年二月に近い水準だ。中小企業に限るとマイナス二七になっている。
日本商工会議所が三日に発表した調査によると、全国の中小企業で人手が不足しているとの回答は60・6%に上り、前の年より5ポイント上昇した。東京商工リサーチによると、多くの人手が必要な介護、運輸業界では倒産する事例さえ目立つ。
一方で牛丼の「すき家」を展開するゼンショーホールディングス(港区)のように「採用の環境が厳しく、競合店の状況をみながら時給を適宜上げている」(広報)との声もある。
明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、人手不足の影響を「非正規雇用の賃上げにはつながっている」と指摘しながらも、「経済が拡大していく将来を見通せない現状では、中小企業の仕事を妨げるマイナス面がより強く出ている」とみている。
東京新聞より
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