4日に発表された7月の毎月勤労統計(速報値)では、こうした感覚を裏付ける結果となりました。実質賃金は前年同月比で0.3%の伸びにとどまり、市場予想を下回っています。中小企業の夏のボーナスが伸び悩んだことなどが原因といわれていますが、やはり全体的に賃金が伸びていないことは明らかといってよいでしょう。
こうした状況は家計の支出にも影響しています。7月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの消費支出が28万471円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.2%減となりました。マイナスは2カ月連続ですから、消費者の財布の紐は確実に固くなっているようです。
日本経済の伸びは公共事業によるもの
実質的な収入が減り、家計の防衛意識が高まってくると、少々やっかいな状況になります。これまで日本経済は比較的堅調な伸びを示してきたのですが、その多くは政府の公共事業によるものでした。アベノミクスは、財政出動で当面の景気を維持する間に、量的緩和策と成長戦略で持続的な成長を促すというもので、量的緩和策の効果で設備投資が増え、最終的に個人消費も伸びていくというシナリオが期待されたわけです。
しかし設備投資は今のところ伸びておらず、財政再建という観点から、これ以上、公共事業を増やすことも難しい状況にあります。ここでGDP(国内総生産)の6割を占める個人消費が低迷してしまうと、7~9月期以降のGDPに影響が出てくるかもしれません。
実質賃金を上昇させるためには、最終的に企業の生産性を向上させる以外に方法はありません。しかし日本企業は現在の事業モデルを大きく変えることには消極的で、その結果、賃金の伸びも限定的なレベルにとどまっています。当分の間、実質賃金が上昇しないという傾向は続く可能性が高いでしょう。
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