中国が「叩き売り」されている。習近平政権が国際通貨化をもくろんだ人民元は10年ぶりの安値となり、上海株も下げ基調が続く。米トランプ政権は12月にも中国の全製品への追加関税を公表する準備もあるなど対中制裁の姿勢を強め、米国株も大荒れだ。日本では中国と関係の企業が業績を下方修正、韓国株は10月に「世界最大の暴落」を記録するなど、中国と関連の深い企業や市場が軒並み売り浴びせられた。
日経平均株価は朝方に前日終値比113円安まで下げた後、急速に切り返し、午後に入ると一段高となった。午後1時34分現在、418円60銭高の2万1568円40銭と大幅反発した。
前日の米市場でダウ工業株30種平均は245・39ドル安の2万4442・92ドルと約3カ月半ぶりの安値を付けた。
米政権が、米中首脳会談で貿易問題を改善できなければ中国製品全てに追加関税を課すことを12月初旬までに公表する準備を進めているとブルームバーグが報じ、投資家心理を冷やした。
トランプ氏は27日にイリノイ州で行った演説で「中国との交渉がうまくいかなくても問題ない。(中国製品全てに)関税を課すことができる」と述べるなど強気を崩していない。
米商務省も中国の半導体メーカー「福建省晋華集成電路」の半導体メモリー技術が「米国製とみられる」と指摘、米国の軍事システムが脅かされる可能性があるとして、同社への部品輸出を制限すると発表、経済と安全保障を結びつけて中国を追い詰めている。
こうしたなか、中国の人民元の下落が続いている。30日には一時、1ドル=6・97元台と、リーマン・ショック前の2008年5月以来、実に約10年5カ月ぶりの安値をつける場面もあった。
トランプ氏が中国を「為替操作国だ」と繰り返し批判しているのは、中国が意図的に輸出に有利な人民元安にしているとの疑念によるものだ。しかし最近では逆に投資家の人民元売りが進み、中国当局が口先介入を繰り返しても効果がないというのが実情だ。
市場関係者は「ドル買い元売りが止まらない状況にあり、中国からの資金流出懸念も高まっている」と指摘する。
日中首脳会談で中国側が日本との通貨交換協定(スワップ)再開にこだわったのも中国側の危機感の表れとみる向きが多かった。
株式市場でも、主要指標の上海総合指数が30日午前は反発したが、2500台に低迷したままで、世界株安の震源地になっている。
日本でも「中国関連」企業に逆風が吹いている。工作機械大手のファナックは中国での受注が7~9月期にほぼ半減したとして、19年3月期の通期業績見通しを下方修正した。
株式市場でも中国との取引比率が高い銘柄が売られやすく、投資家は業績下方修正に敏感に反応する展開となっている。
貿易戦争による中国の変調が直撃しているのが、中国経済への依存度が高い韓国だ。
主要指数の韓国総合株価指数(KOSPI)は29日に節目の2000を割り込んだ。約1年10カ月ぶりの安値で、17年5月の文在寅(ムン・ジェイン)政権発足以降、最低の水準に落ち込んだ。
韓国の金融当局は29日に株式市場安定化対策を発表したが、「経済のファンダメンタル(基礎的条件)は健全だ」と強調し、抜本的な対策がなかったことに失望した外国人投資家が一斉に韓国株を売り進めた。
ベンチャー中心のコスダック指数は今月に入って約20%下落、KOSPIは15%近く下落しており、韓国メディアは「主要国の市場でそれぞれ世界1位と3位の下落率」と報じた。
30日午前のKOSPIは反発し、2000を挟んで取引されたが、先行きは中国次第だ。
韓国の9月の輸出額は前年同月比8・2%減と、米中貿易戦争の悪影響が鮮明になってきたが、打開策は見いだせない状況だ。夕刊フジより
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