在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系の貿易会社が、北朝鮮側と合弁会社を立ち上げ、レアアース(希土類)の抽出技術を北朝鮮に移転した疑いがあることがわかった。希土類の採掘、処理の過程で天然ウランの抽出も可能で、実質的に核開発の基本技術が日本から持ち出された形だ。
国連安全保障理事会は昨年9月、北朝鮮との合弁を禁止する決議を採択。事業の開始時期とは無関係に、出資などが継続し、未承認で稼働していれば、制裁破りにあたる可能性がある。
政府関係者によると、貿易会社は「国際トレーディング」(東京都文京区)。同社の周辺に東京工業大大学院で学び、希土類を研究した在日朝鮮人学者が存在しており、北朝鮮との合弁事業で戦略的技術や知識などを移す環境を整え、希土類の抽出技術を移転した可能性があるという。同社は登記簿上、昭和62年に成立、平成19年に解散しているが、関係者が完全に活動を止めたかは不透明だ。
北朝鮮側資料では同社は北朝鮮の「龍岳(リョンアク)山貿易総会社」と共同で2000万ドルを出資し、「朝鮮国際化学合営会社」(咸興(ハムフン)市)を開いた。朝鮮国際化学は、平成28年の安保理決議で軍事調達への関与が指摘された「朝鮮連峰(リョンボン)総会社」の子会社と認定。国連は大量破壊兵器開発に関与したとみて朝鮮国際化学の資産を凍結し、監視している。
これまでの安保理北朝鮮制裁委員会や日本政府の調査で、国際トレーディングが北朝鮮側に合弁出資した疑いが浮上。日本の金融当局がさらに調査を進めたところ、凍結された取引口座の存在が判明した。
決議違反となる合弁への出資企業が実質的に存在していたとしても、法人・個人を罰する法律はなく責任追及や技術移転の経緯、実態解明は困難という。
トランプ米大統領との首脳会談で「体制の安全の保証」を引き出した金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長にとって当面、優先度の高い課題は国連制裁網の解除とみられる。「合弁禁止」条項の削除は「重大な懸案の一つ」(外務省関係者)だろう。
金氏は自立的、持続的な経済が育たなければ、国が持たないと考えている可能性が高い。それゆえ、金氏が「合弁」による資本や技術の導入こそ政権の安泰を確実にすると理解しているとしても不思議ではない。
北朝鮮は1984(昭和59)年、対外経済開放政策の一環として「合営(合弁)法」を定め、外国からの技術や資本の導入を図った。最も当てにしたのが在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)。だが、閉鎖的で硬直した体質が災いし、開放政策は頓挫しかかった。
そこで、金日成(イルソン)主席は86年、日本で商いをする在日朝鮮人は日本での地歩を固め、そのために合弁しなければならない-とする教示を発した。以降、朝鮮総連は合弁に邁進(まいしん)。日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書によると、91年当時、北朝鮮国内で開設された合弁は約100社で、80%が在日朝鮮人とのものだった。
朝鮮総連系の「国際トレーディング」創業者は、当初から北朝鮮側と軍需企業の「朝鮮国際化学合営会社」を起こすため、日本で起業したと後に語っている。初めからハイテク素材の原料として有用性が高く、北に豊富なレアアース関連の技術を日本から移転する狙いだった。その抽出技術はウランの場合と同様だ。
取り締まりの法律や体制が整わないため実態把握すら難しく、摘発もできてこなかったが、北朝鮮が仕組んできた合弁の本質は戦略的技術や知識、資本の持ち出しだった。北朝鮮の核・ミサイル開発は、そうした流出の結果の集積である。infoseek newsより
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2018年10月29日月曜日
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