わが国の防衛力は、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出するとともに、脅威を抑止し、これに対処するため、以下の役割をシームレスかつ複合的に果たせるものでなければならない。特に、国民の命と平和な暮らしを守る観点から、平素からさまざまな役割を果たしていくことがこれまで以上に重要である。
ア 平時からグレーゾーンの事態への対応
積極的な共同訓練・演習や海外における寄港等を通じて平素からプレゼンスを高め、わが国の意思と能力を示すとともに、こうした自衛隊の部隊による活動を含む戦略的なコミュニケーションを外交と一体となって推進する。また、全ての領域における能力を活用して、我が国周辺において広域にわたり常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動(以下「常続監視」という。)を行うとともに、柔軟に選択される抑止措置等により事態の発生・深刻化を未然に防止する。これら各種活動による態勢も活用し、領空侵犯や領海侵入といった我が国の主権を侵害する行為に対し、警察機関等とも連携しつつ、即時に適切な措置を講じる。
イ 島嶼(とうしょ)部を含むわが国に対する攻撃への対応
島嶼部を含むわが国への攻撃に対しては、必要な部隊を迅速に機動・展開させ、海上優勢・航空優勢を確保しつつ、侵攻部隊の接近・上陸を阻止する。海上優勢・航空優勢の確保が困難な状況になった場合でも、侵攻部隊の脅威圏の外から、その接近・上陸を阻止する。万が一占拠された場合には、あらゆる措置を講じて奪回する。
ミサイル、航空機等の経空攻撃に対しては、最適の手段により、機動的かつ持続的に対応するとともに、被害を局限し、自衛隊の各種能力および能力発揮の基盤を維持する。
ゲリラ・特殊部隊による攻撃に対しては、原子力発電所等の重要施設の防護並びに侵入した部隊の捜索および撃破を行う。
ウ あらゆる段階における宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応
平素から、宇宙・サイバー・電磁波の領域において、自衛隊の活動を妨げる行為を未然に防止するために常時継続的に監視し、関連する情報の収集・分析を行う。かかる行為の発生時には、速やかに事象を特定し、被害の局限、被害復旧等を迅速に行う。
また、社会全般が宇宙空間やサイバー空間への依存を高めていく傾向等を踏まえ、関係機関との適切な連携・役割分担の下、政府全体としての総合的な取組に寄与する。
エ 大規模災害等への対応
大規模災害等の発生に際しては、国民の生命・身体・財産を守るため、所要の部隊を迅速に輸送・展開し、初動対応に万全を期するとともに、必要に応じ、対応態勢を長期間にわたり持続する。また、被災者や被災した地方公共団体のニーズに丁寧に対応するとともに、関係機関、地方公共団体および民間部門と適切に連携・協力し、人命救助、応急復旧、生活支援等を行う。
オ 日米同盟に基づく米国との共同
平時から有事までのあらゆる段階において、「日米防衛協力のための指針」を踏まえ、日米同盟におけるわが国自身の役割を主体的に果たすことにより、2で後述するような日米共同の活動を効果的に実施する。
地域の特性や相手国の実情を考慮した方針の下、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む防衛協力・交流を戦略的に推進するなど、3で後述するような安全保障協力の強化のための取組を積極的に実施する。
2 日米同盟の強化
日米安全保障条約に基づく日米安全保障体制は、わが国自身の防衛体制とあいまって、わが国の安全保障の基軸である。また、日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定および繁栄に大きな役割を果たしている。
国家間の競争が顕在化する中、普遍的価値と戦略的利益を共有する米国との一層の関係強化は、わが国の安全保障にとってこれまで以上に重要となっている。また、米国も、同盟国との協力がより重要になっているとの認識を示している。
日米同盟は、平和安全法制により新たに可能となった活動等を通じて、これまでも強化されてきたが、わが国を取り巻く安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増す中で、わが国の防衛の目標を達成するためには、「日米防衛協力のための指針」の下で、一層の強化を図ることが必要である。
(1)日米同盟の抑止力および対処力の強化
平時から有事までのあらゆる段階や災害等の発生時において、日米両国間の情報共有を強化するとともに、全ての関係機関を含む両国間の実効的かつ円滑な調整を行い、わが国の平和と安全を確保するためのあらゆる措置を講ずる。
このため、各種の運用協力および政策調整を一層深化させる。特に、宇宙領域やサイバー領域等における協力、総合ミサイル防空、共同訓練・演習、共同のISR活動および日米共同による柔軟に選択される抑止措置の拡大・深化、共同計画の策定・更新の推進、拡大抑止協議の深化等を図る。これらに加え、米軍の活動を支援するための後方支援や、米軍の艦艇、航空機等の防護といった取組を一層積極的に実施する。
自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することを含め、望ましい安全保障環境を創出するため、インド太平洋地域における日米両国のプレゼンスを高めることも勘案しつつ、海洋分野等における能力構築支援、人道支援・災害救援、海賊対処等について、日米共同の活動を実施する。
また、日米共同の活動に当たり、日米がその能力を十分に発揮するため、装備、技術、施設、情報協力・情報保全等に関し、協力を強化・拡大する。
特に、日米共同の活動に資する装備品の共通化や各種ネットワークの共有を推進する。また、わが国周辺における米軍の持続的な活動を支援し、わが国装備品の高い可動率の確保にも資するため、米国製装備品の国内における整備能力を確保する。
また、日米の能力を効率的に強化すべく、防衛力強化の優先分野に係る共通の理解を促進しつつ、有償援助(FMS)調達の合理化による米国の高性能の装備品の効率的な取得、
日米共同研究・開発等を推進する。
(3)在日米軍駐留に関する施策の着実な実施
接受国支援を始めとするさまざまな施策を通じ、在日米軍の円滑かつ効果的な駐留を安定的に支えるとともに、在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減していく。
特に、沖縄については、安全保障上極めて重要な位置にあり、米軍の駐留が日米同盟の抑止力に大きく寄与している一方、在日米軍施設・区域の多くが集中していることを踏まえ、近年、米軍施設・区域の返還等の沖縄の負担軽減を一層推進してきているところであり、引き続き、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域の整理・統合・縮小、負担の分散等を着実に実施することにより、沖縄の負担軽減を図っていく。
3 安全保障協力の強化
自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進する。その一環として、防衛力を積極的に活用し、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む防衛協力・交流に取り組む。また、グローバルな安全保障上の課題への対応にも貢献する。こうした取組の実施に当たっては、外交政策との調整を十分に図るとともに、日米同盟を基軸として、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々との緊密な連携を図る。
オーストラリアとの間では、相互運用性の更なる向上等のため、外務・防衛閣僚協議(「2+2」)等の枠組みも活用しつつ、共同訓練・演習の拡充、防衛装備・技術協力を一層推進するとともに、地域の平和と安定のため、二国間で連携した能力構築支援等の協力を進める。また、普遍的価値と戦略的利益を共有する日米豪三国間の枠組みによる協力関係を一層強化する。
インドとの間では、戦略的な連携を強化する観点から、「2+2」等の枠組みも活用しつつ、海洋安全保障を始めとする幅広い分野において、共同訓練・演習や防衛装備・技術協力を中心とする協力を推進する。また、日米印三国間の連携を強化する。
東南アジア諸国との間では、地域協力の要となる東南アジア諸国連合(ASEAN)の中心性・一体性の強化の動きを支援しつつ、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援等の具体的な二国間・多国間協力を推進する。
英国やフランスとの間では、インド太平洋地域における海洋秩序の安定等のため、「2+2」等の枠組みも活用しつつ、より実践的な共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、二国間で連携した第三国との協力等を推進する。欧州諸国並びにNATOおよび欧州連合(EU)との協力を強化する。
カナダおよびニュージーランドとの間では、共同訓練・演習、二国間で連携した第三国との協力等を推進する。
中国との間では、相互理解・信頼関係を増進するため、多層的な対話や交流を推進する。この際、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、軍事力強化に係る透明性を向上するよう引き続き促していく。また、両国間における不測の事態を回避すべく、「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」を両国間の信頼関係の構築に資する形で運用していく。中国によるわが国周辺海空域等における活動に対しては、冷静かつ毅然(きぜん)として対応する。
太平洋島嶼国との間では、自衛隊の部隊による寄港・寄航を行うとともに、各自衛隊の能力・特性を活かした交流や協力を推進する。
中央アジア・中東・アフリカ諸国との間では、協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベルを含めた交流や国連平和維持活動に係る能力構築支援等の協力を推進する。
また、多国間枠組みについては、インド太平洋地域の安全保障分野に係る議論や協力・交流の重要な基盤となっている東アジア首脳会議(EAS)、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)、ASEAN地域フォーラム(ARF)等を重視し、域内諸国間の協力・信頼関係の強化に貢献していく。
(2)グローバルな課題への対応
海洋における航行・飛行の自由や安全を確保する観点から、インド、スリランカ等の南アジア諸国、東南アジア諸国といったインド太平洋地域の沿岸国自身の海洋安全保障に関する能力の向上に資する協力を推進する。また、共同訓練・演習や部隊間交流、これらに合わせた積極的な寄港等を推進するとともに、関係国と協力した海賊への対応や海洋状況把握(MDA)の能力強化に係る協力等の取組を行う。
大量破壊兵器およびその運搬手段となり得るミサイルの拡散や武器および軍事転用可能な貨物・機微技術の拡散については、関係国や国際機関等と協力しつつ、それらの不拡散のための取組を推進する。また、自衛隊が保有する知見・人材を活用しつつ、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する議論を含む国際連合等による軍備管理・軍縮に係る諸活動に関与する。
国際平和協力活動等については、平和安全法制も踏まえ、派遣の意義、派遣先国の情勢、わが国との政治・経済的関係等を総合的に勘案しながら、主体的に推進する。特に、これまでに蓄積した経験を活かし、人材育成等に取り組みつつ、現地ミッション司令部要員等の派遣や我が国が得意とする分野における能力構築支援等の活動を通じ積極的に貢献する。なお、ジブチ共和国において海賊対処のために運営している自衛隊の活動拠点について、地域における安全保障協力等のための長期的・安定的な活用に向け取り組む。
1 基本的考え方
防衛力の強化は、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するために、従来とは抜本的に異なる速度で行わなければならない。また、人口減少と少子高齢化の急速な進展や厳しい財政状況を踏まえれば、予算・人員をこれまで以上に効率的に活用することが必要不可欠である。
このため、防衛力の強化に当たっては、特に優先すべき事項について、可能な限り早期に強化することとし、既存の予算・人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分するほか、所要の抜本的な改革を行う。
この際、あらゆる分野での陸海空自衛隊の統合を一層推進し、縦割りに陥ることなく、組織および装備を最適化する。特に、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力、総合ミサイル防空、被害復旧、輸送、整備、補給、警備、教育、衛生、研究等の幅広い分野において統合を推進する。
一方、主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、将来における情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持することとし、より徹底した効率化・合理化を図る。
(1)宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力の獲得・強化
領域横断作戦を実現するため、優先的な資源配分やわが国の優れた科学技術の活用により、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を獲得・強化する。この際、新たな領域を含む全ての領域における能力を効果的に連接する指揮統制・情報通信能力の強化・防護を図る。
ア 宇宙領域における能力
情報収集、通信、測位等のための人工衛星の活用は領域横断作戦の実現に不可欠である一方、宇宙空間の安定的利用に対する脅威は増大している。
このため、宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位等の各種能力を一層向上させるとともに、宇宙空間の状況を地上および宇宙空間から常時継続的に監視する体制を構築する。また、機能保証のための能力や相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を含め、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用の優位を確保するための能力の強化に取り組む。
イ サイバー領域における能力
サイバー領域を活用した情報通信ネットワークは、さまざまな領域における自衛隊の活動の基盤であり、これに対する攻撃は、自衛隊の組織的な活動に重大な障害を生じさせるため、こうした攻撃を未然に防止するための自衛隊の指揮通信システムやネットワークに係る常時継続的な監視能力や被害の局限、被害復旧等の必要な措置を迅速に行う能力を引き続き強化する。また、有事において、わが国への攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力の抜本的強化を図る。
その際、専門的な知識・技術を持つ人材を大幅に増強するとともに、政府全体の取組への寄与にも留意する。
電磁波は、活用範囲や用途の拡大により、現在の戦闘様相における攻防の最前線として、主要な領域の一つと認識されるようになってきている。電磁波領域の優越を確保することも、領域横断作戦の実現のために不可欠である。
このため、情報通信能力の強化、電磁波に関する情報収集・分析能力の強化および情報共有態勢の構築を推進するとともに、相手からの電磁波領域における妨害等に際して、その効果を局限する能力等を向上させる。また、わが国に対する侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等を無力化するための能力を強化する。こうした各種活動を円滑に行うため、電磁波の利用を適切に管理・調整する機能を強化する。
(2)従来の領域における能力の強化
領域横断作戦の中で、宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力と一体となって、航空機、艦艇、ミサイル等による攻撃に効果的に対処するための能力を強化する。
ア 海空領域における能力
このため、わが国周辺海空域における常続監視を広域にわたって実施する態勢を強化する。
また、無人水中航走体(UUV)を含む水中・水上における対処能力を強化する。
さらに、柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築等により、特に、広大な空域を有する一方で飛行場が少ないわが国太平洋側を始め、空における対処能力を強化する。その際、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、自衛隊員の安全を確保しつつ、戦闘機の運用の柔軟性をさらに向上させるため、必要な場合には現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる。
イ スタンド・オフ防衛能力
各国の早期警戒管制能力や各種ミサイルの性能が著しく向上していく中、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国への攻撃を効果的に阻止する必要がある。
ウ 総合ミサイル防空能力
弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機等の多様化・複雑化する経空脅威に対し、最適な手段による効果的・効率的な対処を行い、被害を局限する必要がある。
このため、ミサイル防衛に係る各種装備品に加え、従来、各自衛隊で個別に運用してきた防空のための各種装備品も併せ、一体的に運用する体制を確立し、平素から常時持続的にわが国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威にも同時対処できる能力を強化する。将来的な経空脅威への対処の在り方についても検討を行う。
また、日米間の基本的な役割分担を踏まえ、日米同盟全体の抑止力の強化のため、ミサイル発射手段等に対するわが国の対応能力の在り方についても引き続き検討の上、必要な措置を講ずる。
島嶼部への攻撃を始めとする各種事態に実効的に対応するためには、適切な地域で所要の部隊が平素から常時継続的に活動するとともに、状況に応じた機動・展開を行うことが必要である。
このため、水陸両用作戦能力等を強化する。また、迅速かつ大規模な輸送のため、島嶼部の特性に応じた基幹輸送および端末輸送の能力を含む統合輸送能力を強化するとともに、平素から民間輸送力との連携を図る。
(3)持続性・強靱性の強化
平時から有事までのあらゆる段階において、必要とされる各種活動を継続的に実施できるよう、後方分野も含めた防衛力の持続性・強靱性を強化することが必要である。
このため、弾薬、燃料等の確保、海上輸送路の確保、重要インフラの防護等に必要な措置を推進する。特に、関係省庁等とも連携を図りつつ、弾薬、燃料等の安全かつ着実な整備・備蓄等により持続性を向上させる。また、自衛隊の運用に係る基盤等の分散、復旧、代替等により、多層的に強靱性を向上させる。さらに、従来の維持整備方法の見直し等により、より効果的・効率的な維持整備を図り、装備品の高い可動率を確保する。
産経ニュースより
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