2018年12月20日木曜日

韓国政府への「徴用工」賠償訴訟提起、お決まりの「内乱」の始まりか

19日発行の夕刊フジでも「フジテレビの報道」として伝えていたが、日本の朝鮮統治下で徴用工だったと主張する韓国人ら約1100人が、これまでのように日本企業相手ではなく、韓国政府に対して、総額110億円規模の損害賠償請求を起こすという。
 
20日、弁護団がソウル市内で記者会見を行うとの報道もあるので、詳細は続報を待つこととするが、事実であるなら、これまさに「師走の珍事」である。

ご承知のとおり、近年の韓国では、半世紀も前に終わったはずの「慰安婦」や「徴用工」について蒸し返し、今さら日本政府と日本企業に謝罪や賠償を求めるという、「異常提訴」「異常判決」が繰り返されてきた。そのため、「この『異常』が、韓国における『通常』なのだ」と思うようになってきたわれわれ日本人から見ると、今般の提訴の動きは驚きの珍事でしかないのである。

しかし、珍しく「まとも」な話なのだから、実際に提訴されるなら肯定的な気持ちで注目したいとは思う。ただ、気になるのは、この「まともな珍事」が起きてきた背景である。

1000人超の規模の「集団」が、これまでとは一転し、韓国政府に刃を向けた背景については不明で、筆者も依然取材中である。現時点で予断は禁物だが、この動きと併せて注視する必要があるのは、韓国の政局だ。

調査機関の韓国ギャラップが今月11~13日、全国の成人1003人を対象に調査を実施し14日発表した結果によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政支持率は就任後最低にまで落ち込んでいる。ついに50%を割り込んだと騒がれた前週の結果から、さらに4%も下落して45%となり、一方で、否定評価(不支持)が44%と就任後最高となっている。

この流れと呼応してか、野党側からは早くも「文政権のレームダック化」などという発言まで飛び出している。さすがにこれは野党による印象操作だとの見方が強いが、気になるのは、このところの政党支持率の変化である。

同じ韓国ギャラップによる同期間の調査では、与党民主党の支持率が、文政権発足後初めて40%以下(36%)に落ち込んだ。対して、保守系野党・自由韓国党の支持率は19%となり、こちらは前週に比べ2%の上昇、文政権発足後の最高値を更新している。

政権支持の低下傾向は今年春ごろから言われ続けてきたのだが、文大統領側は、北朝鮮への対応を支持率上昇に巧みに結びつけてきていた。だが、その「カンフル」の効き目もすでに切れ始め、かねてから言われてきた「経済政策の失敗」が浮き彫りにされ始めている。

「弱者を救う」との美名のもと行われた最低賃金引き上げは、むしろ弱者をさらに追い込む結果となった。懸案だった、若者の雇用環境は一向に改善されていない。そこへ、日米はじめとする国際社会からの大統領への低評価が徐々に伝えられ、国民の「文離れ」に拍車をかけている。

ひょっとすると年明けから、早くも、韓国の政権後期お決まりの流れがまた始まるのか。われわれの好むと好まざるとにかかわらず、北朝鮮情勢と合わせて、目の離せないところである。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)など多数。 夕刊フジより

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