2018年12月23日日曜日

2018年の科学分野の動向を重大ニュース

本庶佑(ほんじょ・たすく)さんがノーベル賞に輝き、探査機「はやぶさ2」が小惑星に到着。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って病気を治す研究も進展した。日本の得意分野で成果が相次いだ2018年の科学分野の動向を重大ニュースで振り返る。
 
本庶さんにノーベル医学・生理学賞

京都大の本庶佑特別教授(76)がノーベル医学・生理学賞を受賞。免疫のブレーキ役となっているタンパク質「PD-1」を発見し、画期的ながん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげて栄誉に輝いた。

日本人のノーベル賞受賞は2年ぶり。授賞式と晩餐(ばんさん)会に羽織はかま姿で臨んだ本庶さんは「がん免疫療法で地球上の全ての人が健康的な生活を送れるようになることを望む」とスピーチした。

がん免疫療法は、患者の免疫力を高めてがんをやっつける。外科手術、放射線治療、抗がん剤に続く「第四の治療法」だ。現時点で効果があるのは患者の一部だが、行き詰まっていたがん治療に革命を起こした意義は大きい。本庶さんは「2050年までには、ほとんどのがんが免疫療法で治療できるようになる」と語った。
 
はやぶさ2が小惑星到着

探査機「はやぶさ2」が6月、約3年半に及ぶ32億キロの旅路を経て小惑星「リュウグウ」に無事到着。2010年に小惑星の物質を初めて持ち帰った「はやぶさ」の後継機とあって、全国の宇宙ファンが沸いた。

リュウグウは「そろばんの玉」のような独特の形をしていることが判明。探査機から投下した小型ロボットで、地表を移動して撮影することにも成功した。

予想外だったのは岩石が非常に多く、平らな場所があまりにも狭いこと。物質を採取するには、狙った場所に想定以上の正確さで着地する必要があり、現状では技術的に難しい。このため宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月の予定だった最初の物質採取を来月後半以降に延期し、解決策を慎重に検討している。
 
iPS臨床が加速

京都大は10月、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から神経のもとになる細胞を作り、手足の震えなどが起きる難病のパーキンソン病患者の脳に移植する臨床試験(治験)を実施した。iPS細胞を使った再生医療の臨床応用は、2014年に理化学研究所などが行った重い目の病気に次いで2例目となった。

脳は目より複雑で、生命維持に関わる重要な臓器だ。移植した細胞の数は理研と比べて桁違いに多く、将来の保険適用を目指す治験の枠組みで実施するなど、再生医療の実用化に向けて大きな前進となった。

iPS細胞の臨床応用は大阪大が心臓病、京都大が再生不良性貧血の患者を対象に、来年にも移植を行う。審査段階の計画も多く、動きは加速しそうだ。
 
政府、有人月探査に参加

政府の宇宙開発戦略本部は今月11日、米国が2020年代に国際協力で目指す有人月探査に参加する方針を決め、宇宙基本計画の新たな工程表に盛り込んだ。

米国の計画では、月上空の周回軌道上に有人基地を建設。実験や探査を行うほか、往復で2年以上かかる火星飛行に向け長期滞在技術の獲得を目指す。政府は工程表に「国際調整や具体的な技術実証を主体的に進める」と明記した。

実現すれば、日本の宇宙開発に大きな飛躍をもたらす。ただ、日本の役割は未定で、巨額の費用負担をどうするかなど課題も多い。JAXAは有人月面着陸機の開発や日本人飛行士の着陸、基地への物資輸送などを目指す。
 
ゲノム編集の双子誕生か

遺伝子を効率的に改変できる「ゲノム編集」技術を使って受精卵を改変し、双子の女児を誕生させたと中国・南方科技大の賀建奎(が・けんけい)副教授が11月に発表。事実なら遺伝子を人為的に改変した人間が生まれた初のケースで、世界中で非難の声が上がった。

賀氏によると、遺伝子を改変したのは不妊治療中の夫婦の受精卵。夫がエイズウイルス(HIV)に感染しており、子供が感染しにくくなるように改変したとしている。

受精卵のゲノム編集は子孫にも予期しない悪影響が及ぶ恐れがある。このため「後悔を招く」などと倫理的な批判が相次ぎ、規制のあり方について議論を呼んだ。ただ、賀氏はデータを十分に公表しておらず、実施自体を疑問視する声も根強い。
 
キログラムの定義改定

質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに改定されることが11月、国際度量衡総会で決まった。合金製の重りである「国際キログラム原器」を基準にしてきたが、原子1個当たりの質量から計算する精密な方法に改める。来年5月20日の世界計量記念日に施行される。

人工物は汚れや摩耗で重さが変化してしまう可能性があるため、絶対に変わらない物理定数を定義に使うことにした。微量の物質を扱う先端技術のニーズに応える狙いがある。

新方式を導入するには物理定数を高い精度で測定する必要があった。産業技術総合研究所は独自のレーザー技術を使い、ケイ素の結晶でできた球の体積を精密に測定するなどして、定数の精度向上に貢献した。国際的に使われる単位の定義決定に日本が初めて加わる快挙となった。
 
ホーキング博士死去

「車いすの天才科学者」と呼ばれた英理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士が3月、76歳で死去した。難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘いながら研究を続け、宇宙の始まりやブラックホールに関する革新的な理論を発表。宇宙論の発展に大きな足跡を残した。産経ニュースより

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