2018年12月24日月曜日

常識はずれの栽培成功「バカマツタケ」量産期待

香りや食感がマツタケにそっくりの「バカマツタケ」の室内での完全人工栽培に、肥料メーカー「多木化学」(兵庫県加古川市)が成功した。人工栽培が難しいとされていたが、同社が独自の技術で菌床を使って室内栽培にこぎ着け、3年後の商業生産を目指す。流通量が少なく<高値の花>の国産マツタケの代替に、飲食店などは「量産できれば質がいいものを安く提供できる」と期待を寄せる。

バカマツタケはマツタケの近縁種で、マツタケと同様に生きた樹木と共生する菌根菌類のキノコ。これまで人工培養した後に林地に植えて生育させた例はあるが、室内での人工栽培はできていなかった。

「入社後に携わった微生物の培養技術が生きた。身近なキノコとして量産体制の確立へ向けてスケールアップしたい」。完全人工栽培に取り組む同社ライフサイエンスグループの主任研究員、秋津教雄さん(43)が話す。

大学でキノコを研究し、入社後は微生物農薬を手掛けた秋津さんを中心に、2012年に研究を開始。間もなく原基(幼体)の培養に成功したが、かさを持つ子実体(成体)まで成長させるには至らなかった。

菌床や室温、湿度などの環境を試行錯誤して取り組んだ結果、今年4月に子実体ができているのを確認。最大で長さ9センチ、重さ36グラムと、天然物よりやや大きめに育った。12月上旬までに19本の生育が確認でき、年間を通しての栽培に道筋を付けた。現在は、大きさや形を整えるために試行中だ。 

国立研究開発法人「森林研究・整備機構 森林総合研究所」によると、生きた樹木の根に付いて栄養分を得て菌糸を広げるバカマツタケは、有機物を分解する能力が低く、シイタケやエノキタケなどの栽培に多く使われる菌床素材のおが粉などから栄養分を得ることができないとされる。それだけに「菌床栽培に近い方法でできたことは常識はずれ」と秋津さん。

同研究所の山中高史さん(生物機能研究担当)は「バカマツタケは養分を加えた菌床などで、キノコの原基状を形成することは知られていたが、成熟した子実体への成長は困難だった。今回は、その壁を乗り越えたもので素晴らしいことだ」と評価した。

マツタケの輸入量と国内生産量の合計は、近年1000トン弱(2017年は約800トン)で、ほとんどを輸入に頼っている。輸入の1位は中国で、次いで米国、カナダなど。国産は2~7%で、国産ものは外国産に比べ、一般消費者にはかなり高額だ。

市場の反応は著しかった。多木化学がバカマツタケの完全人工栽培の成功を公表した10月、同社の株価が急騰し、一時はストップ高になるほど証券市場が動いた。投機的にも注目されている。

加古川市内の飲食店経営者は「海外産のマツタケは国産よりも風味も食感も劣る。国産と同じような味わいのバカマツタケが市場に出回れば、手軽な食材になる」と期待。秋津さんは「バカマツタケは成長が早いのが利点。将来的にはマツタケの人工栽培にも挑みたい」と意気込む。(田辺貴司)

◆メモ=バカマツタケは、マツタケのようにアカマツなどの針葉樹ではなく、ブナ科の広葉樹林に生える。マツタケより約1か月時期が早いことから、「バカ」が付けられたとの説も。香りなど味わいはマツタケ以上と珍重する地域もある。

落ち葉がたまった場所に生えるなど、有機物を分解する能力が少なからずあることが推測されることも観察されている。

マツタケの人工栽培は、胞子形成や成長条件に不明な点が多く、いまだに確立されていない。アカマツのある痩せた土地に生えることから、有機物を基材として生育させようとしても、発生させることは難しいとされる。過去にマツの盆栽や、試験管中で発生したとの報告はあるが、偶然の域を越えていないという。読売新聞より

0 件のコメント:

コメントを投稿

日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁

金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...