私はよく本屋さんを巡っている。日本の本屋さんでは、中国関連の本が大きく分けて二種類ある。一つは「三国志」「史記」「水滸伝」といった中国の時代小説。もう一つは、いわゆる「嫌中本」で、現在の中国の政治・社会を批判するものである。その中でも典型的なものは「中国崩壊論」である。
中国の本屋さんはどういう状況になっているだろう。随分以前から、大型書店では日本人作家の作品が多く並んでいる。大勢の中国人は堂々と日本文化と付き合っているのである。
日本では「嫌中」の本があるので、中国でも「反日」の本があるではないか、と思われるかもしれないが、中国の「反日言論」はほとんどネットのもので、本はほとんど見当たらない。そもそも本にまとめる意味がないのだろう。中国の書店の日本文学コーナーを見ると、現在、中国人が読んでいる日本の本の大部分が「旬の作家」の作品だと分かる。例えば、東野圭吾氏の小説。日本で出版されると、間もなく中国語の訳本も出される。
4月10日、中国メディアによる「中国でよく売れている外国人作家ランキング」が発表された。1位と2位には日本作家の東野圭吾氏と村上春樹氏がランクインした。
特に東野圭吾氏の作品は中国で最もよく売れている。私はかつて中国の友人に「なぜ東野圭吾氏の小説が好きなのか」と聞いたことがある。友人は「今の日本を反映していて、普通の日本人が描かれていて、娯楽性がたっぷりだから」と返答した。
10年前、東野圭吾氏の小説「容疑者Xの献身」が中国で紹介され、大人気を得た。それ以降、中国でファンが増えている。「容疑者Xの献身」と「ナミヤ雑貨店の奇蹟」はすでに中国で映像化された。
先日、新宿区にある漱石山房記念館を見学した時のことだ。同館の管理人さんは「昨年9月に記念館が竣工してから、多くの中国人観光客が来ていますよ。中国語のパンフレットも作りました」と教えてくれた。中国人観光客が漱石山房記念館を訪問していることを中国版ツイッター・微博(ウェイボー)でつぶやいたところ、ネットユーザーから「私は日本旅行で夏目漱石のお墓に行った。そこで数人の日本の大学生に出会い、彼らは夏目漱石が中国でも愛されていることを意外だと語っていた。私が読んだ夏目漱石の作品の数々を挙げると、彼らはびっくりしていた。日本人が想像する以上に、中国人は日本文学に愛着を持っていると思う」とのコメントが返ってきた。一方で、現在の中国の文学作品はあまり日本で紹介されていない気がする。もちろん、日本人の好みに合う作品が少ないのかもしれないが。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料によると、2017年、日本の中国に対する貿易収支は4億4196万ドルと、6年ぶりに黒字に転じた。日本の中国に対する「文学輸出」はこの十数年間、ずっと素晴らしい「黒字」である。日本の図書館では、ノーベル文学賞を受賞した中国人作家・莫言(ばく・げん)の作品のほか、賈平凹(か・へいおう)、閻 連科(えん・れんか)など中国で知名度が高い作家の本は並んでいるが、これからもっと多くの中国の若手作家たちが日本で紹介されてほしいと思っている。
本屋さんの中の「日中関係」を見ると、中国人はファション・音楽・文学など幅広く日本の「今」に注目している。一方で、日本人は「昔の中国」に愛着を持っている気がする。中国の「今」に違和感を持っている日本人が少なくないだろうか。つまり、現在の中国の政治制度を嫌いになってから、現在の中国事情を知る興味が段々となくなったということだ。
実は、中国人が日本の関連書籍を読む理由は、必ずしも好きだからではない。「日本論」を研究するため、日本のことをもっと詳しく知るために読む人もいる。私が以前取材した在日中国人留学生は、おそらく教育の影響で子どものころから日本に「恨み」を持っていた。高校を卒業した後、「日本人と日本語で論戦すること」を目的に日本にやってきた。日本の大学に入学し、たくさんの日本文化の本を読み、その結果、日本を好きになったという。彼は日本に対し「恨み」から始まり、「愛情」にたどり着いたのだ。
毎年、日本でも中国でも、国民の「対中感情」「対日感情」に関する世論調査が行われる。そのような世論調査を見るより、本屋さんで日中関係事情を探り、人々が相手国の文化に対する関心度を分析していくほうが、楽しみながら真相を知ることができるのではないかと思う。infoseek newsより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年6月1日金曜日
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