台湾でバナナ価格が暴落し、作付け農家が苦境に陥っている。豊作による供給過剰と季節による消費者の嗜好(しこう)の問題などが原因。日本市場が台湾バナナを受け入れなくなったことも一因という。台湾メディアの天下雑誌(電子版、4日付)などが伝えた。
台湾政府・農業委員会は今年のバナナ生産量を前年比1%減と見積もっていた。しかし5月には気温が高かったためバナナの出荷量が一気に増えた。台湾では夏のバナナは味が劣るとされている。しかも気温が高くなったため、消費者はバナナを好まずスイカなど別の果物を選択するようになり、消費も落ち込んだ。
農業委員会は6月2日までには取り扱い企業に協力を要請するなどで、バナナ7000トンの買い付けを実現すると宣言。しかし価格の下落は止まらず、6月4日までに、出荷価格は1キロ当たり6~7台湾ドル(約22~26円)にまで落ち込んだ。実情はさらに厳しく、1キロ当たり1台湾ドル(約3.7円)程度に下落した場合もあるとの情報もある。
農業委員会は4日までに改めて、輸出や加工分を含め1万トン以上の買い付けを実現すると宣言。11日ごろまでには出荷価格を1キロ当たり15台湾ドル(約55円)程度に回復させることを目指すと発表した。
台湾省青果運銷合作社の曾詠松(ズン・ヨンソン)総経理は、価格暴落の大きな原因は栽培農家が「台風被害」を当て込むことと指摘。台風被害が報じられるとバナナの出荷価格は1キロ当たり100台湾ドル(約370円)程度にまで高騰する。栽培農家にとってはかえって大きな利益が出るために、作付面積を増やしてしまうという。
曾総経理は「実際のところ、台風が来なければバナナ産業は大変なことになる」と述べた。政府関係機関もバナナ価格変動について早い時期から予想を発表しており、本来ならばバナナ業者が作付け面接を調整するメカニズムは整えられている。しかし種苗業者の思惑などもあり、理想的には機能していないようだ。
天下雑誌は台湾のバナナ輸出が不振になった大きな原因も価格の乱高下にあるとして、日本市場を例として紹介した。1950~60年代に台湾産バナナの日本における市場占有率は90%程度あったが、そのことが台湾人を傲慢(ごうまん)にさせてしまった。10年前には日本における占有率が3%に落ち込み、現在は1%にも満たない状況だ。日本の業者は、台風が到来した途端に、価格が2倍以上に跳ね上がってしまうため、台湾産バナナを敬遠するようになったという。
日本で台湾産に変わって市場占有率を伸ばしたのはフィリピン産バナナだ。フィリピンではバナナの大規模作付けが行われており、品質が均一であることも日本への輸出に有利だった。台湾では輸出業者も小規模で作付け農家も小規模なので、バナナの品質にばらつきが大きいという。
過去5年間にわたりバナナ輸出取扱量が台湾で最も多かった旗山果菜運銷合作社の郭泰呈(グオ・タイチョン)総経理によると、日本向け輸出用として現在はバナナ1キロ当たり12台湾ドル(約44円)で買い付けている。日本側が求める規格に完全に合致したものを扱っているが、「実際のところは、生産地で買い付ける際、不合格としたバナナも多かった」という。
郭総経理は、「この辺りが、バナナの滞貨問題の原因だ」と説明した。
レコードチャイナより
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2018年6月5日火曜日
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