2018年4月5日木曜日

米中貿易戦争が激化! 対中強硬派が暴走、一触即発の事態

米中貿易戦争が激化している。米ドナルド・トランプ政権は3日、中国が知的財産権を侵害しているとして、情報通信や航空、宇宙分野など制裁対象とする約1300品目、5兆3000億円規模の具体案を公表した。中国商務省は「断固として反対する」として同規模の報復措置を打ち出すと表明。すでに鉄鋼・アルミの輸入制限には報復措置を発動した。水面下で落としどころを探るとの観測もあるが、トランプ政権内では中国の軍事的脅威を警戒する対中強硬派が「黒幕」として存在感を強めており、一触即発の事態だ。
 
米通商代表部(USTR)は3日、知的財産権を侵害している中国への対抗措置として、通商法301条に基づき、25%の追加関税を課す対象の候補となる中国製品の具体的な品目案を公表した。

情報通信や航空、宇宙分野など約1300品目で、ハイテク製品を中心に約500億ドル(約5兆3300億円)相当の製品が対象となった。今後、60日以内に対象品目を確定させ、トランプ氏が制裁関税を発動するかどうか最終判断する。

これに対し、4日の新華社電によると、米国の対中制裁品目案について、中国商務省の報道官は「断固として反対する」と批判、近く同規模の報復措置を打ち出すとのコメントを発表した。

米政権が狙い撃ちにしたのは、習近平政権が実施している製造業の振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」の恩恵を受けている製品だ。IT、ロボティクス、航空機、新エネルギー車、発電設備、農業機械、医薬品など10分野で輸入品を中国製品に入れ替えることを目指しているが、政府が国内企業に補助金を出すほか、外国企業への技術移転を強いる恐れがあるとの批判もある。

習政権の方針に対して「中国は厚かましくも、世界に『今後発展する産業は全て中国が支配する。あなた方の経済には将来がない』と宣言した。知的財産の窃盗と移転の強要を対象にした301条は、こういう事態に対応できるよう作られたものだ」とブルームバーグ・テレビに語ったのは、対中強硬派として知られるピーター・ナバロ米通商製造政策局長だ。

ナバロ氏は経済学者出身で、中国問題を研究対象としている。著書の『米中もし戦わば 戦争の地政学』がベストセラーになった。

トランプ政権発足後のナバロ氏は、ゴールドマン・サックス出身で市場経済重視のゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長の影に隠れる形だった。だが、トランプ氏が11月の中間選挙をにらんで保護主義色を強め、コーン氏が政権を去ったのと歩調を合わせるように、急速にナバロ氏が存在感を強めている。

国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏は、ナバロ氏の中国脅威論を採用する形で貿易戦争を仕掛けている。知的財産権などを盗んでいることもあり制裁は当然だというのがトランプ政権の考えだ」と解説する。

ナバロ氏は今月2日、「(報復措置の)連鎖が激化することにはならない」と述べた一方で、中国による不公正な取引慣行などについては改めて批判。中国側が問題に対処せず、「別のパンチを繰り出した」と述べて報復措置を非難した。

中国中央テレビは3日、中国の崔天凱駐米大使のインタビューを報じた。そこで崔氏は、米国が知的財産権の侵害を理由に中国製品に追加関税を課すリストを公表した場合は「中国は断固として、同等の規模、金額、強さをもって反撃する」と述べ、米国を強く牽制した。

ナバロ氏が中国の脅威を訴えているのは、単なる経済問題だけではない。前出の藤井氏は語る。

「今の社会で最大の脅威が中国だとみているナバロ氏は、当然、経済的脅威だけでなく、軍事的脅威も認識している。軍事拡大の裏付けとなっているのが経済と考えており、中国は実際は保護主義なのに海外と貿易するときだけ自由貿易などと称していることも問題視している。政権の将来的な目標は『国際ルールを守る中国』にしていくことだ」

安全保障と表裏一体の貿易戦争。本物の衝突にいつ発展してもおかしくない事態だ。
夕刊フジより

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