北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は20日、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止すると表明し、「今後は強力な社会主義経済の建設に総力を集中し、周辺諸国との緊密な連携と対話を積極化していく」という方針を示した。
この発言、信じないほうがいいだろう。核保有国の立場を堅持する姿勢は崩しておらず、国際社会が求める核放棄の道筋にも言及していないからだ。ICBM以外の中距離、短距離ミサイルも放棄するとは言っていない。
ICBMは米国まで届く最終段階にきているが、核を搭載して爆発させるには相当な技術が必要で、かなり苦戦しているのだと思う。カネもないし、時間もない。しかし、「開発は成功しなかった」ではバカにされるだけだ。
そこで、米朝首脳会談の直前に「中止した」と表明して、交渉の材料に使ったほうが効果的と考えたわけだ。ずうずうしい発想だ。
正恩氏の声明発表を受け、トランプ米大統領は「これは北朝鮮と世界にとって、とても良い知らせだ。すごい進展だ!」とツイートした。この能天気なトランプさんに、北朝鮮の非核化交渉の失敗の歴史を誰か解説してやってほしい。
1994年の米朝枠組み合意に基づいて、北朝鮮は米国からのエネルギー支援と引き換えに核施設を凍結する約束をしたが、隠れて核開発は続けた。2002年にこの合意はほごにされた。
その翌年にスタートした6カ国協議も核放棄を申し合わせながら、すぐに地下核実験を強行。12年にも食糧援助と引き換えに実験を中止したはずだったが、2カ月後にミサイルを発射した。北朝鮮がミサイルを保有し続けるかぎり、実験凍結はたちまち解除できる。
今度の米朝首脳会談で、北朝鮮は「段階的核廃棄」をアピールしているが、米国はリビア方式を主張するだろう。
03年12月、逃走中だったイラクのサダム・フセイン元大統領が米兵に逮捕された3日後、当時のリビアの最高指導者カダフィ大佐は核兵器を含む大量破壊兵器の放棄を表明。米国は英国と協力し、中央情報局(CIA)と英秘密情報部(MI6)が中心となり廃棄任務を行った。
カダフィ大佐は結局、反カダフィ勢力の兵士に拘束されて死亡した。金委員長とその周辺はこのことを恐れているはずだ。だから、リビア方式は嫌だと言っている。体制の保障か、亡命も含めた身の安全を求めている。
トランプ氏は北の核実験中止表明を受けて、「オバマ前大統領にはできなかったじゃないか」と秋の中間選挙に向けた材料にしたいようだ。米国に有利なディール(取引)が出てくれば安易に飛びつくかもしれない。例えば韓国と日本を射程に入れる中短距離ミサイルを残す、などだ。その場合には日韓に米国製の迎撃ミサイルを大量に売って、貿易不均衡是正にもつながる、とほくそ笑む。「死の商人」の発想だが彼なら十分にあり得る。
トランプ氏自身、会談しても成果がなければ途中で帰ってくると言っている。「成果」は友好国との間であらかじめ合意すべきだが、最低でも「検証可能な状態での核放棄」だろう。そのために米中、あるいは国連軍が北に駐在し、現地でずっとモニターする、くらいのことは要求してほしいところだ。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年4月28日土曜日
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