金正恩は、米本土まで届く核ミサイルを持って第2次朝鮮戦争を仕掛けるという金日成が1950年代に構想し、金正日が住民の15%を餓死させても強行した大戦略を完成させようと繰り返し実験をしている。かなり技術水準は上がり、あと数回実験すれば完成するか、すでに完成した可能性すらある。一方、独裁者が暗殺されるなど政権が突然崩壊する可能性も高まっている。政権崩壊のプロセスで、自分を守るためには何でもする独裁者のエゴイズムが、大規模な軍事挑発や韓国などに対するテロを引き起こす危険性がある。
一方、虎視眈々と半島全体を属国化しようと狙っている中国は言うことを聞かない金正
恩にあきれて、厳しい制裁で屈服させるか、本人抜きの「新しい朝鮮」すなわち、親中で改革開放を行い、米韓の影響力を北進させない新政権の樹立を構想し始めている。中国首脳は親中政権樹立の過程で、韓国は対中経済依存度の高さを使っていくらでもコントロールできると判断しているという。
金正恩政権が倒れるプロセスは始まった。我が国と東アジア全体の自由民主主義勢力にとって最善のシナリオは、韓国と北朝鮮住民たちが主導する自由統一だ。最悪のシナリオは、金正恩が戦争やテロをしかけて大きな被害が出ることだ。次悪、あるいは長期的に見ると最悪とも言えるシナリオは、中国主導で金正恩政権が倒され、親中政権が北朝鮮地域にでき、韓国でも米国との同盟を破棄して中国と結ぼうという勢力が政権をとって半島全体が中国の影響下に入り「核を持つ反日国家」となることだ。
最善と最悪の間にさまざまな中間形があり得るが、まずその両極端を頭に置いて、我が国としては、できれば大混乱になる前にまず拉致被害者を助け出し、その上で抑止力を高めるため、現状の日米韓の3国軍事連繋を強める一方、最悪の場合、対馬が「核を持つ反日国家」との軍事的最前線となることもあり得ることを想定して、自衛力を高める努力をしなければならない。白村江の戦いで負けたあとと同じ地政学上の危機が来るかもしれない。現代版「防人」すなわち、憲法改正と軍備増強を急ぐべきときだ。
北朝鮮内部からの情報を紹介しよう。
住民は金正恩への忠誠心を持っていない。昨年10月、労働党創建70周年記念日に金正恩政権が住民に配った贈り物の中に、子供のための飴があった。しかし、国産のその飴は固くて不味いもので、子供らを失望させ、ある地方都市では金日成、金正日の銅像に向かってその飴を献げて「首領さまが召し上がって下さい。私たちは市場で買った飴を食べます」と話した子供が捕まった。
同じ頃、中国と接する国境の町で、住民を集めて政治講演会が開かれた。平壌から派遣された党幹部の講師が「中国を信じるな。お前たちは国境に住んでいるので裏切り者がよく出る」と話したとき、聞いていた住民の一人が「そんなに我々を信じられないなら、朝鮮から切り離して中国にくっつけて下さい」と抗議し、その場で捕まった。
住民たちは、信用できる仲間同士話すときは、金正恩のことを本来呼ぶべき「元帥様」と言わず、「あの若い野郎」「肥った奴」などと呼んでいる。
金正恩政権成立5年目を迎え、当初は少しは暮らしがよくなるかもしれないと期待していた住民も、あきらめている。国境地域だけでなく、内陸まで市場では北朝鮮通貨はほとんど使われず、ドルか人民元がないと小さなもの以外買えない。中朝国境近くでは豆腐一丁も全て人民元でしか買えない。
治安機関も動揺している。今年2月から国家保衛部(政治警察)、人民保安省(一般警察)の末端職員の家族に対する配給が止まったという。職員本人分しか配給がないということだ。これまでは、90年代半ば、一般住民への配給が止まって300万以上が餓死したときもこのようなことはなかった。人民保安省職員らは、市場に行って難癖をつけて物資を没収するなどして家族を食べさせることができる。だが、保衛部は捜査の対象が政治犯であるため、捕まえたら収容所に送るか殺すかしなければならず、ワイロを受け取って見逃すとあとで自分が捕まりかねないから、役得がなく、むしろ生活が苦しいという。独裁政権を守る最後の砦と言うべき政治警察が末端から弱体化している。
北朝鮮・平壌にオープンしたすし専門店でタッチパネルを使い料理を注文する男性客=9月7日
引退した保衛部の元最高幹部は最近、肉親に「国がどうなるか分からない」と漏らした。末端の地方保衛部員らは、住民をなるべきならつかまえたくないと思っている。現政権は長く持たないから、政権崩壊後に自分たちが人民にリンチされることを恐れているという。
様々な方法で外貨を貯めた新興富裕層(トンジュ)がいまや生産分野にも投資するようになった。社会はほとんど資本主義化している。外貨を払い、労働者を食べさせていけるなら小さな工場や商店の経営権を買うこともできる。一定のカネを上納して雇用する労働者を食べさせることができれば、運送業、薬局、食堂、中小工場の経営権を買える。登録は国営企業などになる。保衛部が金の出所を調査するが30万ドル以下であれば、華僑が投資したというとそれ以上問題にならない。労働者の解雇もできるという。
不動産業者が平壌と地方で営業している。土地やアパートを売買する(使用権という建前)。平壌で住宅を買う場合、最低5万ドル、まずまずの家なら30万ドル必要だという。病院務めの医者も自宅で闇開業している。家の表に紙で「●●科診療受けます」とはる。値段も決まっている。現金だけでなく米やトウモロコシでの支払いも認める。
金正恩のまわりの何人かを除くと、みなカネが全てと考えている。権力層の息子らはみな、外貨稼ぎ部門にいき、やりたい放題ドルを使っている。国家保衛部長金元弘の息子金チョルは外貨稼ぎの利権を父親の威光で従来の業者から奪い、怖いもの知らずでカネ儲けをし「セキ(子供)保衛部長」と呼ばれている。彼は、平壌で仲閒を引き連れ遊んでいる。いつかあの一家も殺されるとささやかれている。金チョルは金正恩の実兄正哲らとグループを作って平壌で贅沢三昧をしている。正哲は金正恩の了解もらわず海外に出かけている。保衛部もどうしようもない。
ついに、昨年から党の秘密資金が枯渇しはじめた。各地方の党責任書記には外貨上納が割り当てられ、それができないと地位を追われる。軍や治安機関幹部らさえ金正恩への忠誠心はない。近く金正恩政権は倒れて、改革開放政権ができることは必至で、そのときまとまった外貨を持っていて鉱山などを買い占めればよい暮らしを維持できるが、それに失敗すれば軍や党の幹部もみな乞食になると考えている。
ソ連が崩壊したとき、外貨を持っていた者は油田やガス田などを買い占めマフィアになったが、それ以外の幹部は使用人となったと、陰で話し合っている。平壌の幹部は改革開放に備えて100万ドル集めることを目標にしており、地方幹部は10万ドルを目指している。物資の横流し、ワイロ、情報を海外に売るなど、地位を利用してカネになることなら何でもする。
金正恩があまりにも多く粛清、殺した。軍では軍団長、師団長クラスは簡単に殺す。党、軍、保衛部ではみな側近になりたがらない。昇進しても一切助言はせず、与えられたことだけする。
昨年の玄永哲人民武力部長公開処刑を見てみな恐れている。姜健軍官学校で行われた公開処刑を参観させられた軍幹部ら、俺たちは何のために生きているのかと感じ、忠誠心を失った。金儲けしか考えていない。
在外公館も本国から外貨は来ず、自給を強いられている。大使の月給が千ドル程度で麻薬や密輸で稼ぐしかない。海外で秘密資金の持ち逃げが続出している。昨年、香港で500万ドル、ロシアで600万ドル持ち逃げされた。秘密資金を管理している党39号室関係者が外貨を持って韓国に逃げた。韓国政府は私有財産は没収しない。
英国大使館公使をはじめ、高官の亡命が相次いでいる。韓国政府の調査によると2014年から16年に韓国に入った脱北者の約7割が「北朝鮮で自分は中・上級の暮らしをしていた」と答えている。経済的理由ではなく、体制への不満から脱北する幹部が増えている。
昨年、韓国マスコミが亡命説を報じ、北朝鮮が「スキー場工事に今も従事している」と否定した朴勝元上将は本当に亡命していることを私は確認した。彼は元人民軍総参謀部副参謀長を歴任した最高幹部の一人で機密情報を多数持っている。朴上将の略歴は以下の通りだ。1946年11月生まれ、現在69歳。人民軍人養成のための最高学府である金日成軍事総合大学を卒業し、1992年4月に中将階級に上がり、人民軍総参謀部副参謀長を歴任した。
2000年9月に済州島で開催された第1回南北国防長官会談に北朝鮮側次席代表として参加、2002年4月人民軍上将(星3つ)階級となった。2010年9月、金正恩が後継者として正式に推戴された朝鮮労働党代表者会議で党中央委員に選出された。
韓国政府は認めていないが、私が入手した北朝鮮側の情報によると、亡命した将軍は4人いる。少将1、中将1、上将2。残り3名の名前は不明だ。韓国マスコミがやはり昨年亡命説を報じた朴在慶大将は亡命していないが、第三国で保護されている可能性がある。これまでの軍人亡命の最高位は大佐だったから、将軍が複数亡命した事実は、人民軍幹部の忠誠心がどれほど低下しているかを示す指標となる。
内部情報によると、多くの将軍らは金正恩にはついていけない、除去すべきだと考えているが、家族親戚まで粛清されるので機会を待っているという。朴勝元将軍も韓国で金正恩打倒を支援して欲しいと提案したという。
すでに金正恩暗殺未遂事件が2回あった。1回目は2012年11月3日、平壌紋繡通りの建設現場でのことだった。その日、金正恩は完工を控えた複合サービス施設柳京院と人民野外スケートリンク、ローラースケート場を視察するということになっていた。当日朝ある男性が柳京院の近隣の横になった檜の木の下に巧妙に隠されていた装填された機関銃を発見して直ちに保衛部に申告し、暗殺未遂事件が発覚した。事件直後、金正恩官邸と別荘をはじめとする専用施設30ヶ所余りに装甲車100台余りが新しく配置された。
2回目は日本でも一部で報じられた2013年5月、平壌市内での交通事故偽装暗殺企図だった。現場にいた女性交通巡査が「共和国英雄」称号を受けたことから、暗殺説が拡散していたが、北朝鮮は「金日成、金正日の肖像画を火事から守った」という偽情報を流していた。
最後に北朝鮮の金正恩政権がテロ集団ISに韓国内でテロを起こすことを依頼した、という驚くべき情報について書いておく。私が今年4月頃、北朝鮮内部から入手したところによると、米韓軍が斬首作戦(金正恩殺害軍事作戦)演習を行ったことに激怒した金正恩は3月初めISが支配するシリア国内に5人の使者を送り韓国内でのテロ実行を依頼し、見返りとして武器支援を提示した。ISはその依頼を受諾したという。まさに、「悪の枢軸」によるテロ連繋だ。 iRONNAより
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