2017年8月28日月曜日

さらばモンキー 半世紀愛された二輪車にファン殺到

8月26日、都内のホンダ本社1階に100人近くの二輪ファンが集まった。お目当ては原付き1種のレジャーバイク「モンキー」最終モデルの商談権の抽選会だ。1967年の発売から半世紀のロングセラーは500台の限定生産にも関わらず4万5333通の申し込みがあった。倍率はおよそ90倍。1つの工業製品がこれだけ愛され続けた理由はどこにあるのだろうか。会場に集まったファンと、実際にモンキーを担当したホンダのデザイナーに話を聞いた。

最後のモンキー500台の抽選に当選した茂木さん(右)(東京・港のホンダ本社)
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最後のモンキー500台の抽選に当選した茂木さん(右)(東京・港のホンダ本社)

■原型は遊園地向けバイク 累計66万台に
 
「実は初めての二輪ですが小柄なボディーにひかれました。ガソリンのモンキーはもう手に入らないかと思って」。会場で当選した茂木孝さんは満面の笑顔。埼玉県新座市から夫婦で来ていた29歳の男性は「歴史は分からないけど初心者にもとっつきやすいかなと。落選してしまいましたが中古を今から探そうと思います」と残念そうに話した。
 
モンキーはホンダが作った遊園地「多摩テック」のアトラクション向けバイク「Z100」が原型となった。67年に市場投入された初代モンキー「Z50」は、車のトランクに積み込めるようハンドルは折り畳み式になっていた。排気量は50ccながら、大型バイクと同じようにシフト操作で運転するマニュアル車で、小柄な分、乗り手が比較的カスタム(改造)しやすいのも特徴だ。入門車としてだけでなく二輪ファンにも愛され、累計生産台数は66万台を超えた。会場でも「コンパクトでかわいい」「フォルムやデザインが街でも目をひく」との声が多かった。
 
「限られた大きさの中にバイクとしての機能を凝縮したモデル。タンク、シート、サイドカバーとデザインの面でも普通のバイクと変わらない。その中で若手のデザイナーが常に葛藤しながら挑戦してきた」。ホンダOBの小泉一郎氏はこう振り返る。同じくモンキーのデザインを手掛けた本田技術研究所の吉村雅晴研究員は「カブがビジネス向けの機能を突き詰めたように、レジャーバイクとしてのおもしろさを追求した」と語る。同氏が担当し、2014年に販売した「くまモンバージョン」では、スポーツカーのエンジンに使われた特殊な赤色の塗装をふんだんに盛り込むなど「もらさずこだわりがついている」(吉村氏)。

■「3ない運動」、排ガス規制の逆風
 
モンキー登場後、原付き1種は手軽に使える「生活の足」として最盛期を迎える。70年代後半から原付き1種全体の生産台数は100万台を超え、モンキーも兄弟車「ゴリラ」などを投入した。しかし、高校生の二輪車利用を禁じる「3ない運動」が広がったのに加え、安全や排ガスを巡る規制など、二輪車を巡る環境は年を経るごとに厳しさを増す。足元でも9月から排ガスなどを巡る新たな規制が既存車種に対応して適用されるほか20年には新規制の導入が議論されている。手軽さが強みだった小排気量帯の二輪車には強い逆風となる。
 
販売当初の販売価格は6万3000円だったモンキーも規制対応を重ね、最新のモデルは税別で32万6500円。「寂しいが、二輪車を自分でいじるようなバイク好きでないと手は伸びにくくなった」。かつてホンダの「エイプ」に乗っていたという男性は会場内に展示されていた歴代モンキーを見ながらこぼした。
 
入門車として、愛車として活躍してきたレジャーバイク、モンキーは一旦半世紀の歴史に幕を下ろす。しかし07年の規制の前後に生産終了と復活を経験した。ホンダ二輪の看板をしょってきた「スーパーカブ」は18年をメドに電動化して市場に投入する予定だ。二輪車にも電動化の波が訪れる中で、姿や名前を変えても新たなレジャーバイクを生み出せるのか。二輪のトップメーカー、ホンダにとっても未経験の挑戦となる。  日経新聞より

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