2017年8月29日火曜日

金正恩氏が夢見る「ソウルの泥沼」と「無人機で暗殺」

北朝鮮は、黄海上の南北境界線に近い韓国の延坪島とペンニョン島の占領を想定した特殊作戦部隊の攻撃訓練を、25日の「先軍節」に合わせて行った。訓練は金正恩党委員長が視察する中、航空部隊と砲兵隊が2島に見立てた島に砲爆撃を加えた後、空と海から歩兵部隊が奇襲上陸し、韓国の海兵旅団を撃破するシナリオに沿って行われた。

その様子を伝えた朝鮮中央通信によれば、金正恩氏は訓練の出来にたいへん満足し、「敵を無慈悲に掃討し、ソウルを一気に占領し、南朝鮮を平定する考えをしなければならない」と述べたという。
トイレを持ち歩く
北朝鮮がいまこの時期にこうした訓練を行うのは、米韓合同軍事演習に対抗するためだろうが、実際に戦争が起きたと仮定したとき、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が「韓国を平定」することなど出来るのだろうか。

ハッキリ言って、そんなことはとうてい不可能である。

軍事の専門家でなくとも、戦争において最も重要なのがロジスティクス(兵站)であることはわかる。北朝鮮軍は、この部分がものすごく弱い。自軍の兵士が栄養失調で餓死寸前なのに、他国の領土を制圧するなど夢のまた夢である。

飢えに飢えた兵士らは韓国の豊富な食べ物を見て、略奪の限りを尽くす可能性が高い。またそうでもしなければ進軍もおぼつかないのだから、北朝鮮軍は盗賊の群となる。自国においてすら軍紀を守れない軍隊が、他国において規律の整った統治などできるはずもないのだ。

だが、これは北朝鮮軍がまったく怖くないという意味ではない。

朝鮮半島有事を想定したときに、米軍がとくに懸念しているとされるのが、北朝鮮軍が非武装地帯に多数掘削した秘密トンネルの存在である。北朝鮮軍はこれを通じ、1時間に2万人を韓国の首都圏に侵入させることができるとも言われる。

北朝鮮の特殊部隊と韓国の市民が入り乱れるような事態となれば、北に対して圧倒的に優位にある米韓の航空戦力も用をなさなくなる。戦闘が長期間にわたる一方、北朝鮮が自国内で核兵器を使用するのを警戒して、米韓側は平壌に攻め込むことができない。「ソウル占領」を云々する金正恩氏が思い描いているのは、このような泥沼に米韓を引きずり込むことかもしれない。

このように考えると、米韓はやはり「開戦不可避」と判断した時点で先制攻撃し、金正恩氏を排除することを狙わなければならない。繁栄の度合いの大きい韓国の方が、戦争によって失うものが北朝鮮に比べ大きいからだ。

現状、米韓側で「金正恩暗殺」に使えそうな兵器は、各種の地対地ミサイルと地対空ミサイル、米軍のステルス戦闘機などだ。

そして近いうちに、ここに米軍の最新型無人攻撃機「グレイ・イーグル」(MQ-1C)が加わる。アフガニスタンなどでの要人暗殺で実績のある「プレデター」の改良型で、高度7600メートルで30時間の滞空が可能という。翼下に武器を吊るすパイロンも2つから4つに増え、攻撃力も倍増している。

朝日新聞が25日付で報じたところによれば、米国がイエメンやアフガニスタンなどで行ってきた無人機を使った要人殺害のデータを持たない北朝鮮は、グレイ・イーグルの韓国配備などを警戒し、旧ソ連の諜報機関である国家保安委員会(KGB)の元要員らを軍事顧問として招請したという。

有事が近づいたら、平壌上空に音もなく進入する無人機により命を狙われることを、金正恩氏も承知しているのだろう。ふだんから自分用トイレまで持ち歩く金正恩氏が、無人機から逃れるのは楽ではあるまい。

「ソウルの泥沼化」が早いか、「金正恩暗殺」が早いか。朝鮮半島有事の帰趨は、もしかしたらこの辺にかかって来るかもしれない。  infoseek newsより

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