相変わらず、世界最大の問題は、北朝鮮です。これに絡んでアメリカは、中国・ロシアに制裁を課すそうです。なぜ?
<米国>中露企業に制裁 北朝鮮と不正取引 石炭輸入など 毎日新聞 8/23(水)0:50配信
【ワシントン会川晴之】米財務省は22日、北朝鮮の核・ミサイル開発に関わる不正な取引をしたとして中国やロシアの企業など10社6個人を制裁対象に加えた。米国企業と取引ができなくなるほか、米国内の資産が没収される。
「北朝鮮の核・ミサイル開発に関わる不正な取引をした」中国とロシアの企業・個人が制裁されるそうです。アメリカ企業と取引ができなくなり、米国内の資産が没収される。
制裁対象となったのは、2016年までの3年間に北朝鮮から5億ドル(約550億円)相当の石炭を輸入した中国企業3社や、北朝鮮にガソリンなどの石油製品を販売したロシア人3人、シンガポールの企業2社など。
(同上)
北朝鮮から石炭を輸入した中国企業。北朝鮮に石油製品を販売したロシア人。このアメリカの行動について。ロシアは、制裁慣れしているせいか、反応していません。しかし、中国は。
中国はただちに反論。中国企業を罰するという「間違いをすぐに正す」よう求めた。
(BBC News 8月23日)
米中ロ朝の現状
米中ロ朝の現状を知っておきましょう。
まず、北朝鮮から。金正恩は、アメリカの脅威に怯えています。反米の指導者、たとえばフセイン、カダフィは、殺された。シリアのアサドは、ロシアに守られている。しかし、アメリカは、可能であれば彼も殺すでしょう。
特にリビアのカダフィの例は、金正恩を恐怖させます。カダフィは、イラク戦争が始まった03年、「核兵器開発」を放棄しました。国連安保理は、この決断を評価し、リビア制裁を解除した。しかし、彼は8年後、米英仏に攻撃され、殺された。
こういう例もあるので、金正恩は、アメリカを信用することができない。「核兵器を放棄したら、俺も殺されるだろう」と感じているはずです。
スイス・ジュネーブで開かれている「軍縮会議」で北朝鮮の代表は、こんな発言をしています。
北朝鮮の外交官、ジュ・ヨンチョル氏は米国による「絶え間ない核の脅威」にさらされているのだと主張した。ジュ氏は、北朝鮮による「核の抑止力を高め、大陸間ロケットを開発するという措置は、このようなあからさまで現実の脅威に直面するなかでの、正当な自衛の選択肢だ」と述べた。
(同上)
次、アメリカ。アメリカはこれまで、北朝鮮の核開発を止めることができませんでした。理由は、「武力行使ができなかったから」です。なぜできなかったかというと、「北朝鮮を攻めれば、韓国人が100万人死ぬ」と言われているから。
また、「どうせ北朝鮮の核兵器は、アメリカ本土に届かない」ということで、切迫感がなかった。しかし、今年7月、北朝鮮は二度ICBM実験を成功させた。アメリカの専門家たちも、「ニューヨークを攻撃できる可能性がある」と分析している。
もはや北朝鮮の核は、「アメリカ自身の問題、アメリカ自身の脅威」になった。こうなると、「韓国には申し訳ないが、アメリカはアメリカ自身を守らなければならない」となり、戦争の準備が着々と進められています。
とはいえ、誰も100万人の犠牲者など望みません。それで、「制裁強化」で北朝鮮を交渉に引きずり出したい。しかし、両国は、条件に決定的差があるので、なかなか難しい。
- アメリカは、北朝鮮の核兵器を放棄させたい
- 金正恩は、「核を放棄すれば、カダフィのように殺される」と信じているので、インド、パキスタンのように、「事実上の核保有国」として認めさせたい(つまり、核放棄はしない)
最後、中国・ロシア。中ロが、「北朝鮮の核兵器保有を望まない」「金正恩に困っている」というのは事実でしょう。しかし、それは、「北朝鮮が核兵器をもつと、核保有の寡占体制が崩れるから困る」「アメリカの同盟国、日本・韓国が核保有する口実ができる」「金正恩は、いうことを聞かない」などの意味。「グアムにミサイルを撃ち込む」と脅されているアメリカとは、全然次元が違います。
そう、北朝鮮は、中ロの脅威ではないのです。むしろ地政学的位置づけは、「アメリカの侵略を止めてくれる『緩衝国家』」。だから、文句を言いながら、中ロは北朝鮮を守ります。
確かに、金正恩は、素直でない。しかし、金王朝が崩壊し、アメリカの同盟国韓国を中心に朝鮮半島が統一されればどうでしょう? 北朝鮮と中国の国境付近にアメリカ軍基地ができ、北京を攻撃できるミサイルが配備されるでしょう。そう考えると、わがままな金正恩の方が、「まだマシ」なのです。
アメリカは、そういう事情で、中ロを制裁します。
怖いのは、世界大戦
先日、バノン首席戦略官が解任されました彼は、『フォース・ターニング』という本をバイブルにしていることで知られています。この本によると、歴史は、80年ごとに繰り返されるのです。
そういえば、08年に大不況が起こったとき、誰もが「1929年の世界大恐慌」を思い出しました。1929年から2008年までは、79年で約80年といえます。
バノンは、辞める直前のインタビューで、「北朝鮮は、前座だ!」と発言していた。そして、「アメリカは、中国との経済戦争に集中すべきだ」とも語っていた。つまり、彼は、アメリカの戦争について、
「前座は北朝鮮」
「メインは中国」
と考えているのでしょう。
もし、アメリカが北朝鮮を攻め、中国とロシアが北朝鮮側に立って戦えば、それこそ、「第3次世界大戦」になります。とはいえ、80年前のシナリオが、ほぼ同じく繰り返されるわけではありません。
たとえば、1929年の危機時は、「古典派」しかなかったため、深刻な事態になった。08年の危機では、アメリカが即座に大規模な財政出動と金融緩和を行うことで、破局は回避された。これは、「80年前の失敗から学んだ」のですね。
トランプ、習近平が事態の深刻さを理解し、大戦争が回避されることを願います。
MAG2NEWSより
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