2017年8月2日水曜日

日銀が大株主”って どういうこと

日銀“ETF買い”で株価支える

ETF(Exchange Traded Fund)は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、主な株価指数に連動するよう主要企業の株式を組み込んでつくられた投資信託です。このためETFの買いが膨らめば、株価を押し上げる効果が見込めます。

日銀はこのETFを大規模な金融緩和策の一環で積極的に買い入れています。
                                       
当初は年間4500億円増えるペースで購入していましたが、その後、1兆円、3兆円と増額し、1年前の去年7月末、年間6兆円に倍増しました。

これによって東京株式市場では、“買い手”としての日銀の存在感が増しています。
とりわけ午前中、株価が下がって終わると、その後、日銀がETFの購入に動いて株価を押し上げる展開が何度も見られ、市場関係者からは「官製相場」という言葉もよく聞かれます。

日銀出身でJPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは「日経平均株価の値動きは、為替との相関関係が強いが、日銀がETFを年6兆円のペースで買い入れて以降は、これまでの為替との相関関係の水準を超えて株価が上昇している。実際に買い入れることによる効果に加えて、『日銀がETFを買う』というシグナルが市場に働いている」と分析しています。

日銀“ETF買い”で大株主に!
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大量購入を続けていることで、日銀のETF保有額は14兆5500億円まで膨らんでいます。(7月20日時点)

その結果、多くの上場企業で日銀が実質的な大株主となっています。
ニッセイ基礎研究所の試算では、日銀が10%以上の株式を実質的に保有している企業は14社に上ります。(ことし3月末時点)

このうち、半導体検査装置メーカーのアドバンテストでは16.8%。ユニクロを展開するファーストリテイリングでは15.3%に上るとしています。
「わが社の実質的な大株主は日銀!」。
そんな異例の事態が今、進んでいるのです。

試算した井出真吾チーフ株式ストラテジストは「日銀が企業の株式を実質的に大量に保有し、当面は売却しないことで株価が高止まりしやすくなる。その結果、株主や経営者が『株価が下がらないから大丈夫だ』として経営課題を見逃すなど、経営が緩むおそれがある」と、日銀が“隠れた安定株主”になることによる負の影響を懸念しています。                                    
日銀“ETF買い”を続けていくと
 
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では、こうした状況を日銀はどう考えているのか。
                                       
黒田総裁は7月20日、金融政策決定会合後の記者会見で「ETFの買い入れは株式市場のリスクプレミアムに働きかけるために行っており、株価の水準や変動とは関連しない。また企業のコーポレートガバナンスを阻害していない」と述べました。
日銀は最新の「展望レポート」で、目標とする2%物価上昇率の達成時期の見通しを「再来年度・2019年度ごろになる可能性が高い」として1年、後ずれさせました。
これはすなわち、日銀が大規模金融緩和の長期化を余儀なくされ、“持久戦”の様相がさらに色濃くなることを意味します。

日銀が今のペースのままETFの買い入れを物価目標の達成時期とみなす2019年度まで続ける。そしてその後、ETFの買い入れ額をしだいに縮小し、最終的にすべて売却するとした場合、どれくらいの期間がかかるのか。井出さんは以下のように試算します。
 
<試算の前提>
                                           
(1)物価目標の実現に向け2019年度末まで、現在のペース(年間6兆円=月間
5000億円)でETF買い入れを継続。

(2)物価上昇率が2%に達した2020年4月以降、買い入れ額を月間200億円ずつ減らし、2年間で毎月の買い入れ額を0まで減らす。

(3)物価目標の達成を受け、2022年4月以降、毎月2000億円ずつ売却する。

以上の前提に基づいた試算では、日銀のETF保有額は2018年3月末に18.5兆円、2019年3月末に24.5兆円、2020年3月末に30.5兆円と膨らみ続け、2022年3月末に36.5兆円のピークに達するとします。

そして、日銀のETF保有額がゼロになるのは今から20年後の2037年になるとしています。
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日銀“ETF買い”の出口は
 
日本経済を蝕むデフレに歯止めをかけるため、2000年代初頭、世界の中央銀行に先駆けて金利の上げ下げではなく、国債などの金融資産を大量に購入して市場に巨額の資金を供給する「非伝統的な金融政策」に踏み込んだ日銀。

しかし、日本経済の再生が遅々として進まない中、リーマンショック後の危機対応として、日銀に遅れて「非伝統的な金融政策」を導入した欧米の中央銀行は今、日銀に先んじて金融政策の正常化へ着々と動き出しています。

中央銀行がETFを大量に買い入れることで、株価を支えるにとどまらず、企業の実質的な大株主となる事態は健全ではなく、日本もいずれ金融政策の正常化に舵を切っていかなければなりません。

ただ、そこにたどり着くには、デフレ脱却を果たし、日銀がETFの買い入れを減額したり、売却に転じたりしても動じない“足腰の強い経済”を実現する必要があります。

「金融政策とともに成長期待を高める構造政策が重要である」
                                   
直近の7月19,20日に開催された金融政策決定会合で出された意見の1つです。
金融政策に過度に依存するのではなく、政府・日銀、さらには経済界も一体となって日本経済の再生に向けた成長戦略・構造改革を進めていかなければ、異常事態からの“出口”は迎えられません。 NHKニュースより

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