(※7月22日にアップした記事を再掲載しています)
文大統領は「国民の反発」を前面に出しているが、日韓合意を朴槿恵(パク・クネ)前政権の代表的な「積弊(弊害)」として国民感情を刺激しているのは、韓国政府や市民団体の方である。その本音は一体、どこにあるのか。
文氏が指名した鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)・女性家族相は、成均館大学教授からの転身だが、韓国で最も有力な左翼系市民運動団体「参与連帯」の共同代表としての方が有名だ。「参与連帯」は選挙の落選運動で有名だが、慰安婦像建立の支援でも知られる。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が6年前、ソウルの日本大使館前に設置したときは「世宗(セジョン)参与自治市民連帯」が支援、昨年末、約200の市民団体が釜山の総領事館前に建てた際には「釜山参与連帯」が支援した。
安倍晋三首相が2015年、米上下両院合同会議で演説した際に、鄭氏は「謝罪と反省」を求める韓国人による抗議活動に参加し、参与連帯共同代表としてソウルの日本大使館前集会(水曜集会)で慰安婦に関する公式謝罪などを求める演説したこともある。こうした背景を持つ運動家を、慰安婦問題の管轄官庁のトップに指名したのだから、文政権の狙いは明白とみるべきだろう。
日韓合意後、朴前政権で女性家族省は慰安婦問題からいったん手を引いていたが、鄭氏が今月はじめ長官に就任するや、活発に活動を開始した。
鄭氏は就任直後に慰安婦問題関連資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産登録を支援する考えを表明、次いで日韓合意に基づき元慰安婦に「癒やし金」を渡してきた「和解・癒やし財団」(日本が資金10億円を拠出、韓国が運営)についても「活動を点検する」方針を打ち出した。そして「人権侵害を記憶するため」として慰安婦博物館の建設を発表して「慰安婦問題はもはや韓日問題ではなく国際的問題」と述べている。
6月末には、日本大使館前と総領事館前の慰安婦像が地元議会で「公共造形物」とする条例が成立、“公共物”になった。いずれも与党「共に民主党」議員の発議だった。
そもそも文在寅氏は「合意は無効」を強硬に主張してきた人物である。合意当時は野党党首として国会に「無効と再協議」を求める決議案提出を主導。日本政府が拠出を決めた10億円についても「朴槿恵政権は魂を売った」などと批判して「国民募金運動」を提唱したのも文氏だった。
大統領就任後は「再協議」の言質を封印したが、米メディアには「解決の核心は日本が法的責任を認め公式に謝罪することだ」(ワシントン・ポスト)などと述べている。文政権は合意を棚ざらしにしたうえで既成事実を作り、合意の空洞化をたくらんでいるようにもみえる。
日本政府は慰安婦記念日の制定計画など文政権の合意違反についてその都度、韓国側に抗議を行い、「合意順守」を求めているが、まったく効果はない。
「韓国側は日本の対応を試しているフシもある。こちらも様子をみている。だが、このままでは、いずれ“堪忍袋の尾が切れる”だろう」(外務省幹部)
しかし、日本政府に確たる対韓戦略があるようにはみえず、日韓合意が掲げる「最終的かつ不可逆的な解決」は一方的に踏みにじられている。 産経ニュースより
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