2017年8月26日土曜日

防衛大綱見直し 「専守」逸脱を危惧する

日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて防衛力の在り方を見直すとしても、憲法九条の枠内で行うのは当然だ。「専守防衛」を逸脱して、軍拡競争の泥沼に陥ることは厳に避けるべきである。
 
安倍晋三首相が今月三日の内閣改造の際、小野寺五典防衛相に対して防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直すよう指示した。
 
二〇一三年十二月に閣議決定された現行の防衛大綱は一四年度から十年程度の防衛政策の基本方針を定めている。見直しは北朝鮮の核・ミサイル開発の進展などの情勢変化を踏まえたものだという。
 
弾道ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮は、アジア・太平洋地域の平和と安定に対する脅威となっている。日本への攻撃に備え、防衛力を適切かつ効率的に整備することに異論はない。
 
しかし、小野寺氏の発言には専守防衛を飛び越える内容も含まれる。新大綱が専守防衛を逸脱しないよう注視する必要がある。
 
新大綱の焦点はミサイル防衛の強化と敵基地攻撃能力の保有だ。
 
小野寺氏は日米の外務・防衛担当閣僚による会合(2プラス2)で、ミサイル防衛を強化する考えを表明したが、これに先立ち国会では北朝鮮がグアム周辺に向けてミサイルを発射した場合、政府が迎撃可能とする「存立危機事態」に当たりうるとの考えを示した。
 
ミサイル防衛はそもそも能力的に疑問視されている上、仮に迎撃できたとしても、日本の「軍事的行動」が北朝鮮による日本直接攻撃の引き金を引きかねない。
 
日本を守るための防衛力整備が日本自身を攻撃にさらすきっかけとなっては本末転倒だ。敵基地攻撃能力の保有も同様である。
 
首相自身は「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としているが、小野寺氏は能力保有を求める自民党提言を踏まえて「総合的にどのような対応が必要か検討したい」と述べている。
 
政府は、ほかに攻撃を防ぐ手段がない場合には「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としてきたが、自衛隊がそうした能力を保有することはなかった。北朝鮮の脅威が念頭にあるとはいえ平時から他国攻撃の兵器を持つことは憲法の趣旨に反しないか。
 
過去四回の大綱見直しはいずれも有識者らによる会議の提言を受ける形で行われた。国民の生命や財産、憲法に関わる問題だ。今回も政府内部の議論にとどまらず、幅広く意見を聞くべきである。  東京新聞より

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