2017年8月1日火曜日

脅せば何でも通る国・韓国

一部の市民団体が朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の生誕100周年記念切手の発行を撤回するよう要求した際にはそれなりの根拠があったはずだ。彼らがいくら無茶でも「独裁者の記念切手とは何事だ」という主張だけでは、既に決まった発行計画を覆すのは困難だからだ。

そこで調べてみると、郵政事業本部の「切手類発行細則」に「政治的、宗教的、学術的に論争がある素材は記念切手を発行できない」という条項があった。あきれた条項だ。論争が起きれば、主張が妥当かどうかを検討するのが当然だが、条項通りならば、論争をつくり出しさえすれば、切手の発表を阻止できることになる。「反対にはそれなりの理由がある」として、反発を何でも正当化した結果、国全体が大混乱に陥った文革期の中国の「造反有理」と何が違うというのか。

朴正熙生誕100周年の記念切手に反対した勢力とそれに屈服した郵政事業本部は、ホー・チ・ミンの記念切手の事例を学んでもらいたい。1950年代の北ベトナムはホー・チ・ミンの主導で土地改革を行う過程で地主を虐殺し、軍隊を動員して農民の蜂起を鎮圧した。その結果、1万-1万5000人の国民が殺害された。韓国でそんな人物を記念する切手を発行することはできるだろうか。しかし、ベトナムは1890年生まれのホー・チ・ミンの生誕90周年、100周年、110周年、120周年に記念切手を発行した。彼が犯した大規模な殺害という過ちに比べ、今日のベトナムを打ち立てた功を重視したからだ。

論議の種は避けようという態度は、今日の韓国社会の特徴とも言える現象の一つだ。とんでもない主張に押され、社会の基本秩序が解体され、国家のアイデンティティーまでもが揺らぐ例が繰り返されている。昨年決めた計画を今年になって覆した朴正熙記念切手の撤回はその一例にすぎない。

先日国防部(省に相当)が慶尚北道星州郡で終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の電磁波の安全性を測定しようとして拒否された。「THAAD配備を撤回した上で測定すべきだ」という無茶な主張をする人々に国防部が降参してしまった。それに先立ち、星州のTHAAD基地前で公権力が検問を受けるというとんでもない事態が起きたのも「無理を通して脅せば何とかなった」という経験をTHAAD反対団体に与えてしまったからだ。そればかりか、天安市は反米団体の反発を受け、在韓米軍関連のイベントを中止。議政府市では人気歌手が一部市民団体の脅迫に屈し、米軍第2師団創設100周年記念コンサートのステージに立たなかった。このように脅迫と難癖が通用するものだから、何でも戦おうということになるのだ。

歴代の米大統領のうち最も尊敬されるリンカーンは、奴隷解放問題で分裂した国を統合した指導者として評価されている。偉大な業績の根底には不当な脅迫に堂々と対抗して闘う勇気があった。大統領選挙に勝利し、イリノイ州から首都ワシントンに向かっていたリンカーンは「ワシントンで就任式を行ったら暗殺する」という脅迫状を受け取った。リンカーンの対応は断固としたものだった。「安全な就任式を怖がって避けたりはしない」。

当時ワシントンを警備していた陸軍総司令官のウィンフィールド・スコットは南軍派か北軍派かはっきりしなかった。しかし、リンカーンの勇気に感服し、「新大統領に伝えてもらいたい。いったんここに到着したら、大統領の安全には自分が責任を持つ」と述べ、北軍側に立った。

今年の光復節(8月15日、日本の植民地支配からの解放記念日)にソウルの高尺スカイドームで公演を行う米国の歌手、アリアナ・グランデは今年5月、英マンチェスター公演でテロが起きると、「公演を中止すればテロを起こした勢力の目的通りになる」として、再公演を強行した。不当な圧力に抵抗しない韓国社会が肝に銘じるべき勇気ある選択だ。

考えてみれば、現在韓国が直面する安全保障危機にしても、北朝鮮に「ダメだ」という明確な原則を守らず、状況によって北朝鮮に妥協を繰り返してきたことが大きな原因だ。脅せば南側の自称平和愛好家が全て賛同してくれるのに、北朝鮮が我々を尊重するはずはない。 朝鮮日報より

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