米国南東部サウス・カロライナ州で先月、ビーチで遊んでいた女性が、人食いバクテリアと呼ばれる「壊死性筋膜炎」に感染し、壊死した足を切断するか否かの選択を迫られている。女性の家族がFacebookに公開した投稿記事は、瞬く間に10万人近くに広まった。
ボニータ・フェッターマンさんは先月末、家族と一緒にサウス・カロライナ州のマートルビーチでバカンスを楽しんでいる最中、宿泊先のホテルのバルコニーで転びそうになり、左足を椅子にぶつけて切り傷を負った。たいしたことがないケガだったので、その後はビーチでひと泳ぎした。
ノース・カロライナ州の自宅に戻る29日、足に小さな水ぶくれがあることに気づいた。水疱はどんどん広がり、その晩には左足の膝から下が紫色に腫れ上がった。血圧が急激に低下し、搬送先の救急病院では「壊死の進行が早く、足を切断しなければ生存率は10%」と宣告を受けた。
翌30日には救急ヘリで医療センターに運ばれ、そこで診断した医師は「切り傷から侵入した人食いバクテリアによる壊死性筋膜炎」だと述べて、切断しなくても済むよう全力で治療に当たると励まされたという。
ボニータさんの娘のマーシャ・ベールさんが、母親の回復を願ってFacebook上で祈りを呼びかけた結果、マートルビーチ市が「週に2回、海水の水質検査を行っているが、これまでに問題はなかった。感染した場所が特定できれば、水質検査の回数を増やす」と声明を発表し、海水浴シーズンに向けて不名誉な噂が広まるのを阻止する姿勢を見せた。
ボニータさんは現在もICU(集中治療室)で治療を受けている。米疾病予防管理センター(CDC)によると、壊死性筋膜炎は皮膚や筋肉が急速に壊死する感染症で、手遅れになると短時間で死亡することもある。
歯周炎や切り傷、陰部などから侵入した病原菌が急速に広がることで引き起こされ、感染すると、水ぶくれや紫斑、血疱ができて、激痛を伴うむくみや発熱、陥没性壊死が起こる。原因となる菌は、溶血性レンサ球菌(溶連菌)やウェルシュ菌のほか、沿岸近くの海や魚介類に分布するビブリオ・バルニフィカスなどさまざまで、総称して「人食いバクテリア」と呼ばれる。
今回、最も疑われているビブリオ・バルニフィカスは、海水温が20℃を超える5〜10月に多く、日本でも1970年以降、九州の有明海や八代海沿岸などを中心に100人以上の感染報告がある。米国では2005年に南東部を襲ったハリケーン・カトリーナで避難した人々の間で集団感染が発生し、4人が死亡している。
いうまでもないことだが、本格的な海水浴シーズンを迎えた今、岩場や砂浜のケガや、生の魚介類の摂取にはくれぐれも注意してほしい。 ハザードラボより
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