2018年3月22日木曜日

莫大な投資を回収できるか 正念場の「水素ステーション」

 トヨタ自動車やJXTGエネルギーなど11社が水素ステーションを整備するための新会社を設立した。2018年3月5日、発表した。燃料電池車(FCV)に水素を供給するインフラを「オールジャパン体制」で整えるのが狙いだ。FCVと電気自動車(EV)との次世代自動車覇権争いは、EVが世界的に優勢となっている。FCVや水素ステーションにかけた莫大な投資を果たして回収できるのか、正念場を迎えている。

新会社は日本水素ステーションネットワーク合同会社。英語名Japan H2 Mobility、略称はJHyM(ジェイハイム)。トヨタに加え、日産自動車、ホンダの国内完成車メーカー3社、JXTGエネルギー、出光興産、岩谷産業、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキードのエネルギー関連6社、豊田通商、日本政策投資銀行の金融関連など2社の計11社で構成される。東京都千代田区のトヨタのビルに入居し、トヨタ出身の菅原英喜氏が社長を務める。資本金5000万円で2018年2月20日に設立された。

現在、水素ステーションは国内に約100か所設置され(計画中も含む)、FCVは約2000台が走っている。これを2020年に160か所4万台、25年に320か所20万台、30年に900か所80万台に――というのが国の目標だ。

水素ステーションの建設には1か所4億~5億円かかる。新会社は国の補助を半分程度受け、今後4年間で80か所を整備する。現在は東京、大阪、名古屋、福岡の大都市圏が中心で、北東北や北陸、山陰、南九州などは1か所もないが、「点」を「面」に広げていく。単独での投資が難しくても、11社が組んで国もバックアップすれば、2020年の目標達成も不可能ではない。

むしろ、課題はFCVだろう。2014年末にトヨタが「ミライ」を、16年にホンダが「クラリティ フューエル セル」を発売したが、実際に走っている車を町中でみかけることは、まずないだろう。

ライバルであるEVの国内保有台数は10万台に迫る。充電器は旅館やコンビニエンスストア、自動車ディーラーなどを含め2万基を上回り、ガソリンスタンドの3万店を超えるのも時間の問題だ。自宅に充電器を設置できる手軽さもある。

FCVがEVに勝っているのは1回の燃料補給時間が3分程度で、ガソリン車並みに短いこと。EVは急速充電器でも1回の充電に十数分から数十分かかる。1回の補給で走れる航続距離も最大700キロ程度と、EVの2倍かそれ以上だ。ただし定価は700万円台と庶民にはなかなか手が出ない。EVと違って参入しているメーカー、車種は少なく、選択肢も限られることもあって、劣勢は否めない。

家電の世界では、かつてVHSとベータの「ビデオ戦争」でベータが負け、液晶とプラズマが争った薄型テレビはいつの間にかプラズマが市場から消えた。FCVはどんな運命をたどるのか。家電に比べ、投資額が桁違いに大きいだけに、覇権争いに敗れたときのダメージは計り知れない。

今、手を打っておかないと、取り返しのつかないことになる。FCV陣営はもはや「背水の陣」と言えるのかもしれない。J-CASTより

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