「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
『孫子』の有名な一節である。自分が戦う相手の正体を知り、さらに冷静に自分自身を分析すれば、戦に敗れることはないという意味だ。
米朝首脳会談、南北首脳会談の実施を認めた、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は何を考えているのか。好き嫌いの問題は別として、彼自身が何を考えているのかを確認することが重要だ。
正恩氏は、日本語で2冊の著作集を出版している。演説を収録したものだ。もちろん、彼自身が執筆したものではない可能性が高い。だが、政治家が自分自身の名前で出版した著作物を軽んずるのは間違っている。公開された演説の中から、正恩氏自身の政治的な論理、思考のあり方を解釈していくことは重要な知的作業だ。
ヒトラーは『我が闘争』という著作の中で繰り返し、ユダヤ人憎悪の念を吐露し、全ての悪の根源はユダヤ人にあるという人種差別的偏見を明らかにしていた。狂気的なユダヤ人憎悪の念が明らかにされていたが、多くの人は真に受けなかった。だが、狂気的な憎悪からの殺戮(さつりく)が現実となったのは周知の通りだ。
正恩氏の著作集を丹念に読み込んでいくと、北朝鮮の独裁体制を支えるイデオロギーが見えてくる。例えば、朝鮮半島の歴史について、正恩氏は次のように総括する。
朝鮮半島の人民は、常に「正しい指導」を行う指導者を欠いていたために、大国への従属と亡国を繰り返してきた。その朝鮮半島に金日成(キム・イルソン)主席という不世出の指導者が出現して、人民を正しく指導したからこそ、北朝鮮という素晴らしい国家ができあがった。
もちろん、われわれは北朝鮮が素晴らしい国家だとは全く思わないが、批判より前に、彼ら自身を支える内在的な論理を読み取ることが大切だ。
最も重要なのは、適切な指導を欠いたとする朝鮮半島に日成氏が持ち込んだ指導の内容である。正恩氏は、これを「銃重視を革命の根本として打ち出し」たことであると指摘している。
すなわち、他の全てよりも軍事力を優先するという「先軍思想」こそが、不幸な朝鮮半島の歴史に欠けていた指導だったというのが北朝鮮、そして、正恩体制を支える論理なのである。
こうした北朝鮮の内在的論理を理解すれば、北朝鮮が核兵器を放棄するはずがないことが明らかになる。なぜなら、銃を重視した「正しい指導」の現代版は、まさに核兵器を重視した戦略に他ならないからだ。
北朝鮮が対話によって核兵器を簡単に放棄すると信じている人たちは、正恩氏、そして北朝鮮の論理を全く理解できていない。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年3月19日月曜日
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