年末に「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の改定を控え、日本はいま、NATO(北大西洋条約機構)並みの「防衛費GDP比2%」を目標とし、海外主要国並の軍事力を持つ方向に向かっている。そうしたなか、近年何かと話題に上っている空母保有についても、現実味を帯びてきたという論調が目立ち始めた。複数の海外防衛メディアも、日本の空母保有の是非と可能性を論じている。
◆「いずも」を空母兼護衛艦の「多用途運用母艦」に
日本の空母保有論は、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも型」の登場により、近年は現実的な可能性として論じられてきた。2015年就役の1番艦「いずも」と2017年就役の2番艦「かが」は、広い飛行甲板など空母としても運用できそうな設計から、国内外から事実上の空母と目されている。実際に、日本政府は改修により空母に転用する可能性を検討してきた。
今年5月には、自民党が、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の作成に向け、空母保有を提言。最終的には、本格的な「空母」という名称は取り下げ、状況に応じて戦闘機とヘリコプターを積み替える「多用途運用母艦」の導入構想を打ち出した。具体的には、米国製の垂直離着陸戦闘機F-35Bと、既に運用している対潜水艦ヘリコプターSH60、あるいはティルトローター式垂直離着陸機V-22オスプレイを積み替えることで、戦闘機の洋上基地としての「空母」の役割と、対潜任務や災害救助を主目的とした「護衛艦」の役割を兼務させるというものだ。
新たにF-35Bを搭載する場合、垂直離着陸の際の噴射熱に耐えるため、飛行甲板の耐熱処理が必要となる(現状では、より弱いオスプレイクラスの噴射熱にしか耐えられないという)。より短い距離で航空機を発進させるため、中国やロシアの空母が採用している先端が上に反ったスキージャンプ台型甲板への改修も取りざたされているが、最新の提言では、これは行わないとしている。技術的な壁に加え、ヘリコプターの運用に支障をきたす可能性があるからだ。
◆離島防衛のために空母は「理にかなっている」
日本は、第1次世界大戦で世界に先駆けて空母を中心に据えた作戦を展開し、太平洋戦争でも積極的に運用した空母のパイオニアだ。しかし、言うまでもなく、戦後の平和憲法は「攻撃的兵器」の保有を認めていない。そのため、「いずも型」をめぐる空母保有論には常に、空母は「攻撃的兵器」なのか、「防衛的兵器」たり得るのか、という議論がつきまとっている。
そのなかで、米防衛誌ナショナル・インタレスト(電子版)は、「空母の能力は攻撃的役割に限定されているわけではない」と指摘する。「(空母は)味方の水上艦と基地を敵の攻撃から守るために戦闘機を展開できるし、敵の船や潜水艦の位置を把握するために偵察機とヘリコプターを発進させることもできる」と、空母の能力は攻撃だけでなく、防衛任務や偵察にも活用できるとしている。日本が特に注力する尖閣諸島などの離島防衛には、空母は有効な手段の一つだという考えだ。
同誌は、「日本の空母への回帰は、間違いなく帝国時代の武勇に結び付けられるだろう」と、中国や韓国の反発を予想する。しかし、「ブラジルなどの他国は、拡張主義とは関係なく空母を運用している。日本のような裕福な島国が、離島を守り、領海をパトロールするのに数隻の空母を運用するのは十分理にかなっている」と、日本の空母保有に理解を示している。
◆中国の圧力
米防衛メディア『Defense One』も、中国の脅威が増すなか、特に離島防衛が鍵となる現状では、日本が空母を保有することには一定の妥当性があると見ている。ただし、日本政府は運用面と財政面の2点において、果たして空母がベストな選択なのか、よく考えるべきだとしている。
運用面では、尖閣諸島に比較的近い無人島などに無人機を配備するという「より安く、人員も必要としない」オプションもあると指摘。ただし、「日本には無人機で制空権を確保する技術はない」とし、その取得に莫大な予算と長い年月を注ぎ込む必要があるとしている。そのため、短期的に見れば空母の方が現実的ではあるが、「20機程度のF-35Bで、数で勝る中国空軍を相手に制空権を維持できるのかという疑問は残る」とも言う。
「いずも」と「かが」をそれぞれ改修して計20機余りのF-35Bを新規に購入するのに必要な予算は、約40億ドルだと言われている。安倍政権は、2019年度の防衛予算に約5兆3,000億円要求しているが、その約8%に当たる予算を空母につぎ込めるのか。Defense Oneは、空母部隊の維持費もかかるとし、「既に人口減で隊員の確保に四苦八苦している自衛隊が新たな人員を確保できるのか」と人材難の可能性にも言及している。
中国が新型空母を次々と進水させるなど、海軍力を増強し続けている。動き続ける情勢を見ながら、時節を捉えた判断が必要だろう。Defense Oneは、「日本は今、決断を迫られている。残された時間は少ない」としている。NewSphereより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年11月3日土曜日
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