リーマン・ショック後の世界的な「船余り」で新造需要や受注価格が低迷する中、韓国が経営難の造船所を延命させることで「競争をゆがめ、市況の回復を遅らせている」(日本造船工業会)というのだ。造工会は10月、日中韓欧米の造船会社首脳が三重県に集まる国際会議で是正へ向けた議論を提起するが、先行きは見通せない。
「彼ら(韓国の業界関係者)自身も、現在の船価水準を問題視している」
造工会の加藤泰彦会長(三井E&Sホールディングス相談役)は19日の記者会見で、韓国政府の助成策が造船市況に及ぼしている悪影響を指摘した。
韓国は2015年以降、経営破綻に直面した大宇造船海洋に計1兆2千億円の公的資金を注入した。その結果、同社は採算度外視の大量受注に走り、船価を低迷させているという。
英調査会社クラークソンリサーチによると、積載重量15万トン級のばら積み貨物船の受注価格は足元で4800万ドル(約54億円)と、リーマン・ショック直後の09年より約30%低い。タンカーなどを含めた平均も09年水準を下回っている。
船価低迷の影響で、平成30(2018)年3月期は国内首位の今治造船と2位ジャパンマリンユナイテッドがともに営業赤字を計上した。
日本政府も座視してはいない。韓国政府による多額の公金投入は国際的な安売り競争を招き、世界貿易機関(WTO)のルールに違反している疑いがあると判断、提訴の検討を始めた。
造工会は来月に開かれるJECKU造船首脳会議で議長声明に「設備淘(とう)汰(た)の動きを阻害する政府助成の廃止」を盛り込み、採択したい考え。昨年の会議でも「公正な競争に向けた商業的慣行制度」を掲げたが、さらに踏み込む。
ただ「造船業は韓国の重要な外貨獲得手段」(国内業界関係者)だけに、文在寅政権が直ちに是正へかじを切ることは期待しにくい。加えて今後、米中貿易摩擦による海運需要の縮小も懸念される。国内各社の事業環境は視界不良の状況だ。産経ニュースより
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